第11話 頭髪上指 1/2
平屋建てのとんでもなく広い敷地と家というか、屋敷というか。
THE 日本家屋に不似合いなインターフォンを押す。
ピンポーン。
前は押したら「ジー」って音がするタイプのやつやった。
10年ぐらい前の話やけど。
向こうが美佳を嫌っとるように、私ら家族は本家と仲良うない。
家族には美佳含んどるからな。
こんなどうでもいいようなことを考えとかんと、頭がどうにかなりそうなんや。
「どちらさ――こんな時間になんの御用ですか」
お手伝いさん登場。
割烹着を身に着け、眉間に皺を寄せている。
もう深夜っていうより早朝に近い時間やもんなあ。
朝ご飯の準備してはったんやろね。
大切な雇い主のために。
「美佳様のことで至急話が――」
「お帰りください」
あん?
聞く耳もたず。
昔はこの人だけは優しかったはずやのに。
「お願いします。急ぎの話があるんです。ご当主様を呼んでください」
私が口を出すべき立場じゃないってことはわかってる。
でも、言わなきゃ。
「あの子、憑りつかれて行方不明になったんです。お願いします、お願いします」
頭を下げる私たちに向かってお手伝いさんはため息をつき、
「少々お待ちください」
玄関を閉めていった。
「……」
普通待たせるにしたって、玄関やろ。
なんで外やねん。
まぁ門前払いされんかっただけでマシなんよな。
自分たち以外の人間を見下しとるのが、この家の人間どもやから。
数分か数十分か。
急ぎや、言うたのに全然出てこん。
ガラガラガラ。
ようやっと出てきた。
鍛えているらしいご当主様は、着物の上からでも体格がいいことがわかる。
「こんな時間に何事だ。身をわきまえろ」
不機嫌丸出しで、お手伝いさんとほぼ同じセリフを言われた。
「申し訳ありません」
全員で頭を下げる。
本家と話すときは兎に角下手に出る。
これが分家の鉄則。
いい年齢の機嫌取りをせんといかんのはめんどい。
やけど、今日は我慢。
緊急事態なんや。
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