第7話 Let' go 山へ
太陽が沈む前に山に到着。
いやー遠かった。
ネチネチ言われながら運転させられた依頼主さん、ホンマにご苦労様でした。
荷物をチェックしながら、思わず労ってもうた。
ちゃんと懐中電灯、方位磁石は持ってきたで。
登山道具もな。
万が一はぐれて遭難したとき用。
持っといて損はないやろ。
あるやん、ことわざ。
なんやっけ。
「『備えあれば憂いなし』でしょ」
「そうそう、って……え? 声漏れとった?」
「うん」
マジかーい。
別にええけど。
美佳やし。
I LOVE 美佳。
世界で一番大切な美佳。
言うたことないで。
彼女に対して重すぎる一方通行の愛情を抱いとることは自覚しとるんで。
自重しまっせ。
嫌われとうないし。
あっ、美佳が同性愛について偏見とか嫌悪感もっとるかは不明やから。
そんな話になったことないから。
念のために言うとく……って誰に?
「準備できたん?」
「ん? お、おん。できとうで」
とっくにできてんねん。
美佳はのんびりさんやからな。
けなしとーわけちゃうからっ。
私がせっかちなだけやから!
「ほな行こか」
「おん」
リュックを背負う。
さてさて、ここ最近は楽な依頼が続いとったから気が重いなあ。
今回も無事に終わるとええんやけど。
「雰囲気どない?」
まだ夕方やのに、暗い。
木々が生い茂っとるせいか。
「こりゃ……」
ほんでもって美佳の表情も暗い。
「山の神様が怒っとる」
「げっ」
想像以上にヤバイ案件やんけ、これ。
断っとけばよかったか。
いやいや、美佳が受けると決めた以上しゃーない。
「どんぐらい怒っとるん」
「言葉にできひん」
「うーわ」
霊を感じひんくても、言葉の意味はわかる。
山の神様が怒っとるっちゅーことはや。
他の悪霊さんや幽霊さんも怒っとるっちゅーことや。
頂点におる方が怒っとるのに、下のもんが怒らんわけないやろ。
巻き込み事故に近いやん。
あーもうこれぜってぇ面倒、どころか。
「なぁ」
「なに」
「この依頼、やめようや」
滅茶苦茶デンジャラス。
危険信号。
私の言葉に美佳は立ち止まった。
数歩先を歩いとった彼女は振り返り、
「やる」
歩みを止めんと言うた。
あっちゃー、止められんかった。
畜生。
こうなったら私が全力で美佳を守るだけや!
そんで無事に帰れたら、彼女に内緒でな幽霊さんたち総出で呪ってもらう。
全ての元凶、クソ上司を。
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