第2話 新メンバー

 母さんが作ってくれたフレンチトーストを持って2階の部屋へ。


 私の部屋と美佳の部屋、ホンマは壁があったんやけどね。


 美佳が来てからずーっと私の部屋で一緒におったらな、父さんが壁をぶち抜いてくれた。


 なんかドラマでそんなシーンあったような気がするわ。


 再放送で見たわ、多分。


 それは今ええねん。


「はい、どうぞ幽霊さーん。そんでもってみなさーん、新メンバーですよ」


 姿形は見えんくても、ちゃんと挨拶はせなアカン。


 挨拶は大事。


 世間の常識やろ?


「『よろしくお願いします』、『初めまして』って挨拶しとる」


「いつもの流れやね」


 美佳の通訳必須や。


 あっ、因みにこの部屋には幽霊さんがいっぱいおるんやで。


 何体おるんかなあ。


 バイトで説得できて、普通の幽霊になって、行き場のない方々はうちにお招きしとる。


 出ていくんは自由。


 一応は挨拶する決まりになっとるけど、まぁそこらへんは適当。


 さっき「挨拶は大事」言うたとこやけど。


 矛盾しとるけど。


 気にせんといて。


 来るもの拒まず去るもの追わず、の精神やから。


「仲良うできとる感じ?」


 美佳にクッションを放り投げながら聞いてみた。


 意地悪ちゃうで。


 座る用や。


「うん、馴染めとる」


「そりゃよかった」


 前にあったんが、幽霊さんたちが喧嘩し始めてなぁ……原因は忘れた。


 帰ってきたら部屋が滅茶苦茶になってん。


 勿論ブチ切れ。


 全員正座させてお説教させていただきました。


 以降、『喧嘩する場合は外で』っちゅう決まりができた。


「にしても、深夜にフレンチトーストって。太るやん」


「せやけど食べるんやろ?」


「そりゃな。食べ物に罪はない」


「ふふっ」


 ホンマ綺麗な顔で笑うなあ。


 美人は三日で飽きるって言うやん。


 全然そんなことない。


 日増しに美しさが増してっとるからな。


 変な虫がつかんか心配よ……ごめん、嘘。


 あの子には私以外に友だちおらんのよ。


 なんでかって?


 幽霊がようけ憑いとるからな。


 なんも感じひん子もおれば、近づくだけで体調不良になる子もおる。


 せやから、なんていうたらええんやろ。


 腫れ物を扱う感じ? で友だちできひんねん。


 根本的に、本人は人間関係築くんが苦手で引きこもりなとこあるからな。


「凛がおってくれたらええねん」


 って言われたとき、もう世界中に愛を叫びそうになった。


 でもなんで美佳だけなんやろなあ。

 

 私にも沢山憑いてんのにな。


「歓迎会してるわ」


「そりゃ結構」


 部屋に置いてある小さな冷蔵庫は幽霊さん用やから、好き勝手騒いでくれ。


 Let's 酒盛り。


 私にはなーんも聞こえへんから。


「もうちょっと静かにしてもらえへんかな」


 ごめん、美佳には迷惑みたいやからみんな加減したって。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る