大丈夫だよーお子様ランチー 第一話

平松博之様、礼子様。


お嬢様である桃子様が会いたがっております。


九月二十二日の十二時半にご夫婦でいらしてください。


返信ハガキに思い出の一品をお書きください。


お墓参りは済ませてください。


欠席する場合はその旨をお伝えください。

        

                       彼岸食堂



そんなことが書かれていた招待状が来たのは八月の終わり。


他にも地図と、招待状、返信ハガキがあった。


混乱した礼子は夜に帰宅した博之に封筒に入っていたもの一式を見せて、相談した。


「これ、どういうことかしら。なにかのいたずら?」

「わからない……」


博之も深刻そうな表情で、印字された紙を眺めていた。


「桃子が会いたがっているってどういうこと? あの子はもういないのに」


博之は無言のままだった。いきなりこんなわけのわからない招待状が来て、憤りを隠せない。


なにかの霊感商法だったら悪質だ。けれど、「食堂」と書いているのだから、料理を提供するところなのかもしれない。そこにどうして桃子がいるというのか。


「桃子という名を出して、お金を搾り取ろうという魂胆なんじゃ。どこから桃子の情報を知ったの。許せない。ああ、もうこんないたずら嫌!」


ヒステリックになる礼子を、博之は制した。


「落ち着きなさい。それにしても礼子の言うとおり、なんでこの差出人は桃子のことを知っているのだろうな」


博之は地図を見ている。そうして小さく電話番号が書かれていることに気づいた。


「ここに電話してみるのはどうだ」


博之は電話番号が書かれている項目を指さす。


「本当だわ。電話してみる」


礼子は怒りを抑えきれないまま、電話番号の小さく書かれた用紙を持ち、彼岸食堂に電話をかけた。


コール音が三回鳴った後、相手が出る。


「はい、彼岸食堂です」


紳士的な、落ち着く声だ。礼子は勢いに任せていった。


「あの、招待状が届いたのですけれどどういうことですか。桃子が会いたがっているって書いてあるのですけれど」


少しの間の後、声の主は言った。


「桃子さん、ということは平松様からのお電話ということでよろしいでしょうか」


そういえば名乗っていなかった。


「そうです。桃子は二年前に死んだんですよ。会いたがっているなんて嘘を言わないで。なにかの詐欺ですか。騙すつもりですか」


声の主のため息をつく声が聞こえてきた。


「少し落ち着いてください。私は彼岸食堂という食堂を運営している東郷という者です。春と秋の彼岸に、うちでは彼岸にいるものと此岸にいる者が会って食事をすることができるのです。この度天国にいる桃子さんたっての希望で招待状をお送り致しました」

「桃子が? あなたには死んだ桃子が見えるとでもいうの」

「はい。見ることができます。うちの食堂に来ていただければわかるかと思います」

「どうして桃子がその食堂に来られるというの」


数秒沈黙が流れた後で、東郷は言った。

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