ありがとうー海鮮丼ー 第二話

入口でコック帽を被った店主に、招待状を見せる。


年齢は五十代ぐらい。背が高く、若いころはさぞイケメンだったのだろうと思える顔立ちだ。東郷、と小さく名札があった。


「お花、お持ちなのですね」


袋を見て、東郷は言う。


「はい。友人のお墓参りに行ったらもうご家族がすでに花を添えられていたみたいで」

「よろしければ、テーブルに活けましょう」

「いいんですか」


頷くので、花をそのまま渡した。


「中に入って少々お待ちください」


店内に入って、突っ立ったまま辺りを見回した。彼岸食堂という名前とは正反対に雰囲気の明るい店だ。なにもない変な空間があるが、それを除けばそこらのレストランと変わりはない。


客は少ないが何人かいる。なぜだか泣いている人もいた。


東郷がテーブルの一席に活けた花を花瓶に飾り、そっと置いた。そうして近づく。


「秋本様、準備ができましたのでこちらへどうぞ」


後をついていき、椅子をひかれたので座った。


「海鮮丼でよろしかったですね」

「はい」


頷くと、いったん離れて水の入ったグラスとおしぼりを二つ持ってきた。なんで二つなのか。故人を偲んで、ということなのだろうか。


「ドリンクはなにになさいますか」


東郷はドリンクしか書かれていないメニューを見せる。種類は豊富にあった。


「ええっと……」


海鮮丼にあうものと言ったらなんだろう。普通にお茶でいいか。でも暑い。


「アイスグリーンティーで」


アイスの緑茶、と言えばよかったのに、カッコつけてグリーンティーとか言ってしまった。少し恥ずかしい。


「お、いらっしゃいましたよ」

「は?」


顔を上げると心臓が飛び出そうなくらいに驚き身を引いた。


「よう」


理人が正面に立っている。


「ごゆっくり」


東郷は微笑み去っていく。


え。え? どういうことだ。しばらく混乱していた。


なぜ死んだ理人が目の前にいるのだ。



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