第11話 

 僕も妻も各々の役割を果たしながらもあっという間に時が過ぎていった。

 2人の子供も小学生になり親から徐々に離れつつあった。しかし小学生になると学用品やら塾やらと想定外の出費が増えて僕も経済的な緊張感を強いられることになった。これからは2人の子供が成長するまで経済的な戦いが始まるんだなと覚悟を新たにしていた。

 息子が中学生になった或る日、僕の事務所に立ち寄った。事務所には建築関係の資格証が何枚か貼ってあって息子はそのなかの一枚をまじまじと見つめて「親父はいい年なんだなーと」驚きと同情にも似た声を発した。資格証には生年月日が記入してあり。それを見たのだった。

 それからの息子は少しずつ変わっていった。露骨ないたわりではないがなるべく負担をかけまいとする姿勢を見せるようになった。「高校大学は頑張って国公立に行くからね」と心強いことも言ってくれたりした。無駄遣いなどは控えるようになり、勉強もよくやるようになった。

 僕は毎日子育てやら学校やら仕事やらと無我夢中であった。妻は「10年1日のごとしね」と時々ため息をついていた。

 とにかく子供ができてから成人するまでは人生走りっぱなしだな。ホッとする頃は子供が家を出ていくんだろうなと僕は複雑な感慨も時々覚えていた。




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