第10話

 1か月も経つと息子はすっかり慣れたらしく保育園の庭を走り回っていた。

子供は親が案ずるほど軟弱ではないらしく自分の立ち位置を少しずつ固めているようだった。先生にも「走るのがとても好きらしく、早いですよ」とほめられたりもして、親ばかでうれしくなったりもした。

 春の運動会が近づき父兄が準備に駆り出されることになり僕も出向いて行った。庭には若いお父さんやお母さんが忙しそうに動いていた。僕も近づいていき手伝おうとしたら若いお父さんが「おじいちゃんはそこで休んでいてください」と突然言われた。僕は「え」と納得したようなしないような気分になり愕然とした。

 或る日、息子を保育園に迎えに行ったときも、園児の1人が「息子に向かって、おじいちゃんが迎えに来たよ」と大きな声で息子に向かって言った時、息子はうつむき加減でとぼとぼとあゆみ寄ってきた。今度は息子に何らかの衝撃を与えてしまった。僕は何とも言えない自戒の念で、息子の送迎をやめてしまった。それからは保育園に関係する行事はすべて妻がやることにした。

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