第7話
病院から彼女の実家まで車で30分位の距離なのですぐに実家の前に着いた。彼女はすこし上気して赤ちゃんを抱きしめたがおもいたったように車を降りた。僕が一緒に行こうかと言ったが彼女は1人で行くと言いしっかりとした足取りで実家の玄関に向かった。玄関の引戸を開ける音が聞こえると、ほどなく「まあ」と叫びにも似た母親の声が響いた。僕は少しいら立ちを覚えながら30分位、車の中で待っていた。彼女は少し微笑みながら戻ってきた。「お母さん、とても喜んで赤ちゃんを抱いてくれたわ、おとうさんは相変わらず仏頂面で赤ちゃんの顔も見なかったわ」
彼女は母親だけでも喜んでくれたのがうれしかったのかとてもリラックスしていた。
家に帰ると早速用意していたベビーベッドに寝かせた。
赤ちゃんは最初、体をよじりながらぐずったが僕がじっと見つめると穏やかな表情になり静かに瞼を閉じた。
部屋の中が静かになると2人は顔を見合わせてため息をついた。「やっと一段落したね」と僕が言うと彼女はうなずきながら手足を広げて横になった。
2時間くらい寝たであろうか、2人は赤ちゃんの泣き声で目が覚めた。このときから果てしないミルクとおむつ交換の日々が始まった。そして2人は協力して分担することを約束した。
赤ちゃんの泣き声とミルクとおむつの交換は昼夜なく続き僕は赤ちゃんがいる現実を思い知らされた。僕は自分の母親が「自分の子はかわいいから子供のためには何でもできるんだよ」と言っていた母親の言葉を思い出した。今、僕は赤ちゃんのためにいつでも動いていた。時折ぐずると抱っこしたり、あやしたりと何でもこなしていた。
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