第3話

 決行の日がやってきた。幸い季節は初夏だったので持ち物や服装は身軽だった。

僕は2人分の寝具一式を用意した、彼女はというと1週間分の着替えをバッグに入れて持ってきた。あまり計画性がなく用意周到ではなかったがとにかく家を出るには最低限の準備だった。家を出て2人で寝泊まりはすることができる、とりあえずこれで十分だった、決行をした夜、2人は静かに横になりあまり眠れない夜を過ごした、僕は色々な思いが錯綜して一晩中目がさえていた、彼女は両親に申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、自分の生き方を優先させる方で納得をしていた。

 翌日、案の定、蜂の巣をつついたような大騒ぎになり彼女の父親は警察に捜索願を出したり誘拐事件だと騒ぎ立てたり、なお且つ僕の母親を攻め立てた。

 彼女は父親の騒ぎを鎮めようと実家に帰り「もうことは動き出してしまったのだから冷静になってください」と父親に言った。父親はどなりかえして彼の事を犯罪者呼ばわりしたり、彼の母親にも責任を取らすぞと喚き散らした。

 結局、警察も事情を知ると何事もなかったのようにことを収めた。父親は一通りの騒ぎをすると気が済んだのか少し静かになり家に引きこもってしまった。後に彼女の母親が娘が幸せなら仕方ないね、と父親をさんざんなだめたらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る