―幕間2― 毒島花恋の休日

 とある休日。

 花恋かれんは訪れたヘアサロンにて施術を受けていた。


「~~~♪」

「花恋ちゃんなんかご機嫌じゃない? 何見てるの?」

「あ、わかっちゃう? 実はね、最近ハマってるブランドがあるの!」


 言って、花恋は担当スタイリストの女性にスマホを見せる。

 オシャレなホームページに掲載されているそれは、あるブランドのルックブックだ。


HariLハリル』。新進気鋭のデザイナーである『セツナ』と『クオン』によって手掛けられたブランドである。

 ユニセックスなものづくりを標榜しており、メンズ・レディースどちらでも着用できる洋服を展開している。花恋の見ていたルックもモデルは男性だった。


「この春夏コレクションのデニムが超可愛くてさー。ていうかこのモデルさんめっちゃカッコよきじゃない?」


 写真に写っているのはスラリと背の高い男性だ。柔和な印象で、清潔感のある部屋に一人佇む姿はどこか美術品を彷彿とさせた。


「あー、わかる。花恋ちゃんこういう男がタイプなんだ?」

「まーねー。なんか『男だぜ』って感じの人よりは『へにゃっ』ってしてる人の方が好きかな」


「そうなんだ。でも花恋ちゃん理想高いからなー」

「エリさん誰か良い人紹介してくれない?」


「えー。いいけど、私の知り合い顔は良くてもクズばっかだよ?」

「……むむむ。それはちょっと勘弁してほしいかも」


 うなり声をあげつつ、花恋は再び自分のスマホに目を落とす。

 と、そんな時だ。


「……ん? あれ?」

「どしたの花恋ちゃん?」

「あ、いや……。なんかこのモデルさん、誰かに似てる気がして……」


 呟くと、スタイリストのエリが花恋のスマホを覗き込んできた。


「ふーん。あんま見たことない人だけど、結構若くない? ティーンじゃないの?」

「え……」


 その言葉に、花恋はもう一度その写真を確認する。

 言われてみれば確かに、彼の顔には十代特有のあどけなさが残っていた。


 頭の中に引っかかるものを覚え、花恋はいくつかのルックを確認しそのモデルの写真を見比べる。


「――っあ! この人もしかして……!」


 そして、花恋はその人物の正体に気づいた。



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