第21話 これからのこと 2

「さくら」


「ん?」


 今度はなんや。


「お父さんのことは私に任せて」


「あっ……」


 ごめん、存在忘れとったわ。


 口を半開きにした私を見て、


「ふふふっ。そのままアイツのことは忘れなさい」


 笑顔でとんでもないこと言うたなぁ。


「だけどね、これだけは忘れないで」


「うん」


 一瞬にして真剣な表情に切り替わった。


「貴女の人生なんだから、好きに生きなさい」


「うん、わかった」


 心に刻みつけておくよ。


 ありがとう。


「今日もあの子が待っているんでしょう?」


「うん」


「それじゃあ、さっさと晩御飯作って来るから。さくらは課題……あぁ、明日は土曜日だったわね。少し待っていてね」


「手伝うよ」


「そう? 折角だから手伝ってもらおうかしら」


 今まで手伝ってこなかったことを今更後悔。


 突然孫を押しつけられたのに、おばあちゃんはずっと優しくしてくれた。


「おばあちゃん」


「なに?」


「ありがとう」


「喋っている暇があったら手を動かして」


「はーい」


 スルーされたけど、ちゃんと見とったで。


 お礼を言ったときに微笑んでたんを。


 素直やないなあ。


 初めて二人で作った料理を食卓に並べる。


「もしかしたらこれが最初で最後になるかもしれないわね」


「……どうやろ」


 わからん、そればっかりは。


「今日すぐにどうにかならんと思う」


「そう」


「じゃあ帰りを待っているわね」


「うん」


 そんなことを言いながら肉じゃがを食べて、お味噌汁、ご飯を食べて。


 いつも通り美味しかった。


「よし」


 準備万端。


 お腹は満たされた。


 海咲に問いただす覚悟も決まった。


 玄関で靴を履いていると、


「気をつけてね」


 心配そうな顔をしたおばあちゃん。


 大丈夫だよ。


 今日は帰って来るから。


 お別れすることになったら、ちゃんとお別れのこと言うから。


「行ってきます」


「行ってらっしゃい」


 待っていてね。


 大好きなおばあちゃん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る