第22話 問い問われ
いつも通りの場所。
「お待たせ」
「待ってたよぉ」
海咲が抱き着いてくる。
可愛い可愛い私の人魚さん。
人間になったとき、あまりにもみすぼらしい服装をしとったから、水色のワンピースを贈った。
因みにお揃い。
これは彼女の要望な。
断じて私が「お揃いにしたい!」と主張したわけではない。
それは置いといて。
大事なお話しをせんとな。
「あんな、海咲」
「なぁに?」
「聞きたいことがあんねん」
「うん?」
「単刀直入に聞くわ。山口さん、海に連れ込んだやろ」
断定的な言い方。
彼女の表情は笑顔のまま。
「……どうしてそう思うの?」
「あの子のこと話しとーとき、いっつも拗ねて不貞腐れとったやろ」
「それだけ?」
「うん」
「それだけの理由で、私を疑うの?」
「うん」
根拠なし。
ただの勘。
否定されたら終わり。
さて、どう答える?
「本当のことを話したとして、私にメリットはある?」
普段の能天気で明るい雰囲気はどこへやら。
笑ってはいるけれど、目の奥が笑ってへん。
「ある」
情報を得るには対価が必要やろ。
「海咲は私のことが好きやろ」
自意識過剰。
上から目線。
なんとでも言ってくれ。
「うん、好きだよ」
やっぱり、な。
「それは、どういう好き?」
「質問ばっかだなぁ」
ニコニコ笑って彼女は私の手をとった。
「人魚にしたいくらい」
「成程」
想定内。
「驚かないんだね」
「驚かんよ。私も海咲と一緒におりたいから」
薄々感じとったことやもん。
私のカラダの変化の原因は、海咲と出逢ってから。
もっと言えば、毎日くれる魚を食べ始めてから。
関係があると思わんわけがないやろ。
「そっか。両想いだったんだ! じゃあ、あの子には悪いことしちゃったなあ」
砂浜でクルクルと舞う彼女。
よっぽど想いが通じ合ったことが嬉しかったんやろうな。
「邪魔だから海に引っ張り込んじゃったんだけど。そんな必要なかったんだねぇ」
突然始まった罪の告白。
「人魚にしたんか」
「ううん、違うよ。いつかはさくちゃんを人魚にしようと思ってたのに、あの子を人魚にしちゃったらダメじゃん。海の中で再会しちゃうじゃん」
「たしかに」
ということは、彼女はどうなったんやろう。
水死体が発見されたというニュースは聞いてへん。
ならば海に沈められたか、食料となったか。
どっちでもええ。
もうこの世にいない存在に固執したって仕方がない。
「ねぇねぇ、私のこと嫌いになった?」
無邪気な顔で聞いてくる。
はぁ。
ため息をついてしまう。
「嫌いになれたらよかったわ」
「あははっ、私が思っていたよりもさくちゃんは私のこと愛してくれてるんだね! すっごく嬉しいよ」
ぎゅっと抱き締められた。
今日はずっとハイテンションやな。
そういうところも好きやけど。
「ねぇねぇ」
「なんや」
私の目を真っすぐ見つめ、
「人魚になって、私のパートナーになってくれる?」
ド直球の愛のぶつけてきたのだった。
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