第21話 これからのこと 1/2

 重苦しい空気の後は、


「その人魚といつ出逢ったのか」


「名前は」


「どこが好きなのか」


 根掘り葉掘り聞かれた。


 さっきまでの空気どこ行ったねん。


 宇宙の彼方に消えていったんか。


「めっちゃ聞いてくるやん」


「そりゃねえ、嫁に出すんだもの」


「ちょいちょいちょいちょい、待った」


 嫁?


 ニコニコしながら衝撃発言を聞いた気がするんやけど。


「あんな、まだ海咲みさきの気持ち聞いてないねん。片想いかもしれへんねん」


「でも、互いに顔がタイプなんでしょう?」


「そりゃまぁ」


 否定できひん。


 可愛いし美人やし。


 仕草も声も好みやし。


「あと、さくらは内面も好き」


「そうです」


「いいわねえ。青春してるわねえ」


 呑気すぎんか、おい。


 話を蒸し返すけど、私のせいで友だちが行方不明になったかもしれへんのやで。


「なぁ、おばあちゃん」


 真面目な話に起動修正するわ。


「人魚とはいえ、女同士やで。なんも思わんの」


 言いにくいことやけどな、聞いとかなアカン。


 今までの話の流れで大体答えは予想つくけど。


「好きな人同士が結ばれるなんて素敵じゃない」


「おっふ」


 はい、予想通りでした。


 おばあちゃんは凄く理解のあるご老人です。


 心の中で拍手を送っとくわ。


「えーっと、お名前なんだったかしら」


海咲みさき


「そうそう、海咲ちゃん。その子と無事に結ばれるといいわねえ」


 うちのおばあちゃんハンパねえ。


 同性愛を受け入れるどころか、応援してくれとう。


 すげぇな。


 普通こういう狭い町に住んでたら、頭カッチカチのご老人になるで。


 知らんけど。


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