第19話 異変

 幻聴は一日中聞こえる。


 波の音が小さな音やない。


 海咲と一緒にいるときと同じように聞こえるんや。


 それだけやない。


 海水、つまり潮の匂いも感じる。


 おかげで全く授業に集中できへん。


 なんでや。


 なんでなんや。


 こんなんおかしいやろ。


 ゴーグルをせんくても海の中がハッキリ見えるようになったり、長時間海の中におれるようになったり。


 夜でも海の中が割と見えるようになったり、手足に水かきのようなものができたり。


 陸での生活がしんどーて、家に帰ったら即行お風呂場に行って水を浴びたり。


 たり、たりばっかりや。


 仕方ないやん。


 事実並べたらこうなるやろ。


 私のカラダがおかしなっとる。


 誰に相談すべき?


 保健室の先生? 病院?


 無理無理無理無理。


 誰もまともに話を聞いてくれへん。


 聞いてくれたとしても、実験台にされそうな気がする。


 ドラマの見すぎかもしれん。


 でも、可能性はあるやろ。


 人間からまるで人魚のように変化していくカラダ。


 山口さんの件といい、私のカラダの件といい。


 絶対に海咲が絡んどる。


 でないと説明がつかん。


 この町の人間がみーんな、半魚人か人魚か、やったらすっと納得したわ。


 事実はちゃう。


 大騒ぎになっていないところから察するに、異変が起きているのは私だけ。


「海咲を問い詰めてやる」


 授業をまともに受けるのを諦め、波の音をBGMに私は眠りについた。


 受験生に向けて頑張って授業してくれとる先生ごめんな。


「おい、清水。起きろ」


 私は別に進学せーへんから無視してくれ。


 頼むわ。

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