第6幕 海へ

第17話 貴女は不要 *海咲*

*海咲*


「あーあ、あの子邪魔だなあ」


 山口って子。


 折角私だけのさくちゃんだったのに。


 私のものになる予定なのに。


 いつもは私の話を聞いてくれるさくちゃんが、山口のことになると途端に饒舌になる。


 最初に「友だちできた?」って話を振った私をぶん殴りたい。


「よしっ、消しちゃおう!」


 ちょうど今日はあの子が浜辺に来る日。


 毎週金曜日の夜中。


 彼女は必ずやって来る。


 勉強の息抜きなのか、家にいるのがしんどいのか。


 砂浜になんにも敷かずに膝を抱えて座り、ぼーっと水平線を眺めている。


 まっ、私にとってはどうでもいい話。


 さっさと消さなきゃ。


 これ以上仲良くなっちゃったら、死んだときにダメージがおっきくなっちゃう。


「さてさてどうしようかなあ」


 なんて言ってみる。


 言ってみたかっただけ。


 私がなんにもしなくたって、


「ほら、おいでよ」


 山口は立ち上がりサンダルを脱いだ。


 彼女は服が濡れるのも構わず、どんどん海に入って来る。


 学校か家で相当ストレスが溜まっているのだろうか。


 そうでなきゃ、こんな真似しない。


「もう少し、もう少しおいで」


 足がつくギリギリのところまで来た彼女の足首を掴む。


「キャッ」


 悲鳴は一瞬で水中に吸い込まれた。


 口からゴボゴボと泡が出てもがいている。


 ざーんねん。


 私、意外と力強いの。


 足首を掴んだままどんどん沖の方へと泳いでいく。


 さぁ、みんな。


 今日は久しぶりのごちそうよ。


**

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