第4幕 人魚と人間

第10話 再会

 人魚である海咲みさきと出逢った翌日。


 今日も憎らしいほどの晴天。


「『また明日』言うてたけど、ホンマかいな」


 いつもの場所に来ていた。


 テトラポットを慎重に降り、


「うっし!」


 海に潜る。


 意外と綺麗なんよなーここ。


 ちょっとやけど魚が泳いどっていい感じ。


 たった数回来ただけやけど、お気に入りの場所や。


 どんどん沖の方へ泳いでいると、


「さくちゃん!」


「わっ」


 驚いて一瞬溺れそうになった。


「急に声かけんなや。危ないやろ」


「ごめんねえ」


 全く申し訳なさそうにしていない海咲が目の前にいた。


 正確には、水面から顔が出ている。


「一緒に泳ごうよ」


「おっ、おん。てか、こんなとこおってええん。いつ人が来るかわからんで」


「さくちゃんに会いたいもん!」


 さいですか。


 嬉しいけど。


 心配が勝つわ。


「潜ってみて」


「ん? うん」


 深く息を吸って潜れば、そこには鱗が綺麗に輝く人魚の下半身。


「ぷはっ」


「どう?」


「綺麗やわ」


「んふふ、嬉しい。ちゃんとお手入れしてるんだあ」


 お手入れ。


 へぇ、人魚もそういうことするや。


 人間みたいだな。


 美しさに気を配るのは、人間も人魚も一緒なんやなあ。


「もうちょっと遠いとこまで行く? あっ、さくちゃん泳げる人?」


 質問ばっかりやな。


 しゃーないか。


 昨日話したばっかりやもん。


「泳げるで。ある程度深く潜ることもできる」


「やったあ。じゃあ、行こっ」


 そう言うなり、海咲は私の手を握って泳ぎ始めた。


 ちょいちょいちょい、全く学習しとらんやんけ。


 またいきなりやん。


「大丈夫? 泳ぐの早い?」


「大丈夫や」


「よかった」


 気遣うことはできるのにな。


 無邪気というかなんというか。


 あっ、適切な言葉を思い出したわ。


「自由奔放」


「え、なんて?」


「なんでもない」


 彼女にぴったりな言葉だ。


 平泳ぎをしながら苦笑してしまう。


 ホンマおもろい子やわ。


 笑うと可愛いし。


 笑わんくても美人さんなんやけども。


 それから私たちは、私が疲れるまで泳ぎ続けた。

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