第6話 返ってきた
好奇心は猫を殺す。
たまーに聞くことわざ。
わかっとる。
海に突如現れた手の存在を確かめへん方がええって。
でもな、気になって気になって寝られへんねん。
ガチで。
不眠自慢ちゃうからな。
マジな話。
手を見かけた次の日の夜。
おばあちゃんが寝たのを確認して外出。
「暗っ」
あんまり外灯がない道。
懐中電灯持って来てよかったわ。
因みにスマホは、水没させてもたら一大事やから置いてきた。
「ここら辺やな」
防波堤からテトラポットを照らす。
暗いとようわからんけど、多分ここ。
流石に夜テトラポットを降りるのは危険すぎる。
懐中電灯を海へと向けた。
「あれ」
帽子がない。
勿論手も。
ない、ことが正解と分かっていても、消化不良。
昨日の出来事は私の妄想やったんか。
見間違いか?
いいや、絶対に見た。
私に霊感はないはず。
じゃあアレは……。
「ねぇ」
「ひっ」
突然声をかけられて悲鳴を上げてしもうた。
ビクっと肩を揺らして後ろを振り返ると、誰もおらん。
幻聴?
「こっちだよ、こっち」
斜め前のテトラポットを照らせば、ボロボロのロンTを着た少女が座っていた。
同年代くらいやろか。
髪、滅茶苦茶長いな。
「ビビったわぁ」
膝に手をつく。
てか、誰や。
私好奇心は旺盛やけど、人見知りやねん。
面倒な性格しとるやろ。
自分でも思うわ。
「ねぇ、これ」
「えっ」
彼女の手にあったもの。
それは私の帽子。
「なんで」
「ふふふ」
笑顔可愛いな。
周りがパッと明るくなるような感じ。
それは今どうでもええねん。
「なんで持ってんの」
「私が拾ってあげたんだよ」
彼女は立ち上がった。
おいおいおいおい、テトラポットの上に立つな。
危ねぇよ。
「そこやと危ないからこっちきーな」
「きーな?」
首を傾げる。
うん、可愛いしあざとい。
私が男やったら多分告白しとる。
人見知りなんやけどな。
「ねぇ」
「あぁ、ごめん」
問いに答えてなかったわ。
関西弁やからそりゃ通じひんわな。
「『来い』ってことや」
「そういうことね!」
まるでウサギのように、ピョンピョンとリズミカルにこちらに向かってくる。
せやから危ないっちゅうねん。
「裸足やん」
「うん」
私の隣に立った少女は同じ身長で。
「ちょっとお話ししよ」
防波堤に座った。
「え」
なんで初対面のアンタと喋らなあかんの。
と思いつつ、少女の正体が気になり、私も座った。
だってこの子、学校で見たことないんやもん。
正体知りたいやん。
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