第3話 明日から夏休み
「それではみなさん、二学期に元気に、全員揃って会いましょうね」
担任の言葉を聞き終えるやいなや、クラスメイトたちは教室を飛び出していった。
「夏休みなあ……」
みんな受験勉強の合間に遊ぶ約束をしている。
私抜きで。
予定を聞かれることすらなかった。
いやいやいや、せめて話しかけてこいよ。
まぁ断るんやけどな。
仲が良くない人たちと遊んでなにが楽しいん。
地獄やろ。
「だるいわ」
鞄を手に持ち、教室を出る。
「暑いなあ」
都会の暑さに比べればマシとはいえ、暑いもんは暑い。
「なにしよ」
私は就職するつもりでおる。
大学には行かへん。
父親はしつこく勧めてきたんやけど、
「勝手に転校を決めたんはそっちやろ。やから今度は私が進学するか就職するかは、こっちが決める」
と突っぱねた。
電話越しに。
マジであの人帰ってこーへん。
なんの仕事してんねん。
まさか、不倫しとるんじゃ……。
「有り得るなあ」
最近独り言が心の内ではなく外に出るようになってしまった。
誰も事務的な用事以外で話しかけてくれへんのやから、仕方ないやろ。
「ま、どうでもええか」
突然帰って来て新しい彼女や母親を紹介されたらキレるんやろうな、私。
知らんけど。
「明日からなにしよ」
何度目かわからへん問いを口に出す。
下駄箱で靴を履き替え外に出てみれば、
「だる」
ムカつくぐらいの青空が広がっていた。
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