第24話 それで、今、どこに向かってんの?


 ――残り時間4:10


 ――頑張れ、フェニックス。死ぬんじゃないぞ!


 見ているこっちの心が痛くなるほど、死にものぐるいで飛び続けるフェニックス。

 同情しながら隣に視線を向けると……。


 ――うわぁ。めっちゃいい笑顔してるよー。


「ん? ど〜したの〜?」


 オレの視線に気づいたリスティアさんは、水を得た魚みたいに、それはそれは生き生きしておりました。

 とてもじゃないけど、「いい笑顔してるね」とか、思ってたことを素直に告げれるわけもなし。

 焦りながらも別の話題を探す。


「そっ、そういえば、オレたちどこに向かってるんですか?」


 するとリスティアの表情が急に曇った。

 あっ、ヤバいっ。怒らせちゃったか?

 話題選択を間違えたか?


「む〜」


 とほっぺを膨らますリスティア。

 そんな姿もやっぱカワイイ。


「ごっ、ごめんなさい。なにかマズかったですか?」

「それ。やめて」

「へっ?」

「そのしゃべり方、やだ」


 リスティアさんが怖かったから、無意識のうちに丁寧口調になってしまってたが、どうやら、それが起きに召さなかったようだ。


「ああ、そっか、ごめんごめん」

「うん」


 オレが元通りのフランクな口調に戻すと、途端に機嫌が直ったのか、満開の笑顔が咲いた。同じ笑顔でも、フェニックスに向ける時とはまったくの別物だ。

 うん、やっぱカワイイな。

 これは、惚れてしまうかも……。


「それで、今、どこに向かってんの?」

「次の目的地だよ〜」


 ああ、そりゃそっか。

 言われるがままに着いて行ってるだけだから、ついつい忘れそうになるけど、今のオレは魔王を倒しに行く真っ最中だった。イマイチ当事者意識が薄いなぁ……。


 王城でフェニックスを覚醒させるってのが、3つ目のミッションだった。

 それを無事にこなした今、次のミッションは――とオレは『攻略ガイド』を開く。


【ミッション4】 商業都市国家『シティー』に移動せよ(所要時間60分)。


 なるほど。次の目的地が判明した。

 うーん。これで4つ目のミッションだけど、相も変わらず「ついて行くだけのお仕事」だな……。


 それで、本来なら1時間かかるところなのだが、さっきのフェニックス覚醒の儀式でフェニックスがもたついたせいで(つーか、あんな虐待みたいなこと強要されたんだから、しゃーない)、15分ほど時間が押してる状況だ。

 そのせいで、リスティアさんは激おこ。

 だから、フェニックスは死ぬ気でかっ飛ばしているわけだ……。


 うーん、大丈夫なんだろうか?

 時間的な意味でも、フェニックスの身体がって意味でも。

 まあ、多少遅れてもこの後で取り返せばいいだろうし、フェニックスって確か死んでも生き返るらしいから問題ないか。

 うん。ノープロノープロ。


 ちなみに、今回のミッションについて『攻略ガイド』の該当ページには、世界地図が載っていた。リアルなやつじゃなくて、ゲームのマップみたいにデフォルメされたやつだ。

 しかも、各地の名所旧跡まで書かれている親切仕様。

 このページだけちゃんとした旅のしおりみたいだ。

 これは間違いなくイーヴァの仕事だな。


 地図をよく観察してみると、4、5、6、7、8と5つの数字が振られている箇所がある。4と5は同じ場所で、街のような記号の場所だった。

 その街の名前は商業都市国家『シティー』と書かれている。どうやら、ここが次の目的地のようだ。


 地球の地図と同じように上側が北を指しているなら、『シティー』は王都の東側に位置していることになる。

 この地図の縮尺が分からないから正確なところははっきりしないが、フェニックスの飛行速度と制限時間からすると、およそ100キロメートルってところか。


 ちなみに、6と7は違う場所を指しているが、ともに王都と『シティー』の北側にある広い森の中にある。

 そして、8はそのさらに北、岩山に囲まれた場所にある。

 まぁ、この数字がなにを指しているのかは大体想像がついた。念のためにと、リスティアに尋ねてみる。


「なあ、地図のこの数字ってミッションに対応してるのか?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ、次はこの『シティー』でなんかするのか」

「そそ」


 まあ、『シティー』に到着するまでは、『攻略ガイド』で次のミッションを確認することはできないから、向こうでなにするのか分からないんだけど……。

 どうせリスティアに訊いても教えてくれないだろう。

 それより、今気になるのは――。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『のんびりイチャイチャしているうちに快適な空の旅を終えた』


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