第10話 ドロップ品チェックって、ゲームやってて一番ワクワクする瞬間だよね


「さーて、お楽しみのドロップ品チェックの時間だー」


 ゲームやってて一番ワクワクする瞬間だよね。

 ちなみに、二番目は新しいスキルや装備品の性能を試すとき。

 異論は認める。


 開き直ったオレは、どうせならイージーモードを楽しみ尽くしてやろうと、自ら率先して宝箱に歩み寄り、いそいそとその箱に手をかけた。


 最初に視界に入ってきたのは立派な兜だった。


「おお、キタコレ」

「『勇者の兜』――シズク様専用の装備品です」

「勇者さま、かぶって〜」


 リスティアからのリクエストがなくても、ハナからそうするつもりだ。

 異世界に来て、初めての勇者らしい装備アイテム。

 オレの個人的な好みとしては、できれば最初は剣とかの方がよかったけど、まあ、ゼータク言っても始まらん。この兜自体は十分にカッコいいし、なんの文句もない。


 いやあ、テンションあがるなあ。


 そう思いつつ、手に取った兜を頭に被せ――その重みに耐え切れずに、オレは地面に倒れこんだ。


「残念ですが、まだ装備可能レベルに達しておりません」

「どんまい、勇者さま〜」


 ――どうやら、オレの勇姿をお見せする機会は、しばらく先延ばしのようだ。


 さて、気を取り直していこう。

 宝箱の中には兜の他にも、手のひらサイズの青く透明な宝石のような、クリスタルのようなものが入っていた。


「これは?」


 オレはそれを手に取り、イーヴァに尋ねる。

 見た目よりはずいぶんと軽かったが。状況的に重要なイベントアイテムだろうな。


「青の宝玉です。後のイベントで使用しますが、今は詳しく説明している時間がありません。シズク様が度々盛大なボケをかまして、無駄な時間がかかっておりますので」


 イーヴァが無表情かつ平坦な口調で、オレのハートを抉ってきた。地味に傷つく。


 はいはい、氷で滑ってコケたり、兜かぶってコケたり、足引っ張ってるばかりですみませんね。

 なにせ、こちとら、勇者になってからまだ一時間もたってないから、いまだにパンピー気分が抜けてないんすよ。

 カッコいいところなくて、ごめんなさいね。

 きっと魔王と戦う頃には、勇者の貫禄とかビンビンなはずだから、乞うご期待で。

 予定では5時間後くらいらしいけど、大丈夫か、ほんと…………。


 そんな感じで落ち込みながらも、イーヴァにうながされ、青の宝玉とやらをリスティアに手渡した。

 受け取った宝玉を胸の前で大事そうに抱えたリスティアは「きゃ〜、勇者さまからのプレゼント〜」と嬉しそうに浮かれている。


 ホント、この子はブレないな……。

 出会った当初からオレへの好感度MAXで。

 オレがなにやってもべた褒めで。


 今まで誰かからこんなに好かれたことがなかったから、どう接したらいいのか戸惑ってしまう。


 でも…………。


 リスティアが好きなのは、オレなんだろうか?

 それとも『勇者』なんだろうか?


 まあ、旅を続けていくうちにそれもはっきりするだろう。

 魔王討伐後にどうするかは、それが分かってから決めればいいさ。


 今のうちはゲームみたいなもんだと思って、割りきって目一杯楽しんでやる。


 そんなふうに思いながら、オレたち三人は王城へと戻っていった。


 そして――残りの3匹のドラゴンも同じ様に、リスティアが一撃でサクッとやっつけちゃいました。

 もちろんオレも「立っているだけ」の八面六臂な大活躍だった。


 ――ミッション2クリア――






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『ごめん、姫様はアホの子だと思ってた』


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