第9話 ドラゴンやばくね? でも、姫様もっとヤバくね?

 ――残り時間5:12


 遥か上空から巨大な竜――アイスドラゴンが急降下でこちらに迫って来る。

 最初は小さかったその姿は徐々に大きくなっていき――余裕たっぷりの二人の姫様たちとは対照的に、オレはアイスドラゴンの威容にすっかりビビりあがる。

 いくら安全と言われていても、こえーモンはこえーよ。


 やべー、ちょーこえー。

 ドラゴン、まじやべーよ。

 いや、ムリっしょー。

 完全にこっちが食べられる側っしょー。

 こんなんを相手にするとか、マジムリっしょー。

 コレと戦えとか言われんで、ホントよかったよ。


 アイスドラゴンは突撃ってレベルの速さで降下しながら、こちらに向かって叩きつけるように白い氷雪のブレスを放ってきた。

 リスティアは早々と横に跳躍し、その攻撃範囲から逃れたが、立ち尽くしているオレとイーヴァにはブレスが襲いかかる。

 イーヴァから「動くな」と言われていたけど、そんなこと言われなくても、ビビって動けない状態だった。


 氷弾を大量に含んだ冷気の塊は、しかし――イーヴァが設置したバリアによって完全に無効化され、中にいるオレとイーヴァにはなにも届かなかった。


「すげーな、おい」

「当然の結果です」


 感心するオレだったが、イーヴァは表情を変えすらしなかった。


 威嚇するように両翼を大きく広げ、アイスドラゴンはこちらに迫ってくる。

 その巨体は優に10メートル以上はある。

 明らかに終盤ボスな貫禄が漂う巨躯に向かい、リスティアは躊躇(ためら)うことなく助走をつけて飛躍する。

 数メートルも飛び上がったリスティアは全身を引き絞り、手に持った炎槍を勢いよくアイスドラゴンの胴体に叩きつけた。

 槍がアイスドラゴンの身体奥深くまで突き刺さる。


 ――ギャアアアア。


 アイスドラゴンは切なげな哭き声をあげると、糸が切れたように力を失い、そのまま墜落し息絶えた。


「一撃かよ…………」


 いとも簡単にアイスドラゴンを屠ったリスティアは、そのまま空中でひらりと一回転。軽やかに着地を決めた。

 彼女がひと言唱えると槍と兜は消失し、リスティアは戦闘前の姿へと戻った。


「いえい」


 こちらに突き出したVサインとともに、「ひと仕事おえたぜ」みたいな満面の笑みをこちらに向けてくる。カワイイな、おい。


 オレがリスティアに見とれているうちに、ブレスからオレたちを守ってくれたバリアが消え去った。

 イーヴァが呪文を唱え、バリアを解除したようだ。

 バリアさん、マジ感謝。


 ――とその時、突如、視界前方にステータス・ウィンドウが浮かび上がった。


 どうやら、立っていただけのオレもパーティーメンバー扱いだったらしく、アイスドラゴン討伐の経験値によってレベルアップしたようだ。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 シズク・サクマ

 勇者 LV135


 HP  1560

 MP  1545

 STR  272

 DEF  280(+1)

 AGI  281(+1)

 DEX  224

 INT  267


 EQUIP

 ・布の服(DEF+1)

 ・布の靴(AGI+1)

 ・勇者の指輪


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「って、いきなりレベル135だよ!?」


 レベル1からいろいろすっとばして、まさかの3桁レベル。

 ひと桁が並んでいたステータスも軒並み3桁だし、HP・MPに至っては4桁だ。

 ステータスと装備が全然釣り合っていない。


 パワーレベリングってどころじゃねーな。しかも、立っているだけの簡単なお仕事だし。

 ここまでくるとチートって言われても文句言えないな。

 けど、まあ、イージーモードだし。しゃーないよね。

 よし、もう気にしない。


 などと自分を納得させていると、いつの間にかアイスドラゴンの屍体は消え去っていて、その場所には大きな宝箱が現れていた。








   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】

次回――『ドロップ品チェックって、ゲームやってて一番ワクワクする瞬間だよね』


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