第11話 ごめん、姫様はアホの子だと思ってた
――残り時間4:57
というわけで、2つめのミッションをクリアしたオレたちは王城地下にある『転移の間』に帰ってきた。
「ドラゴンっつーから最初はビビってたけど、案外たいしたことなかったな。実は見掛け倒しのショボいヤツらなんか?」
「そんなことはありません。彼らドラゴンはこの世界でも上から数番目という強さの存在です。ただ、姉上がそれ以上に強すぎるというだけなのです」
「いえい」
当の世界ランカーはドヤ顔Vサインだ。
まあ、あんだけ強ければドヤりたくなる気持ちも分かる。
オレだったら絶対に調子に乗ってるな。
「姉上は2ジョブカンストという頭のオカシイ、もとい、ケタ外れの存在なのです。間違いなく人類最強です」
今の言い間違え、絶対にワザとだよね。
ドヤッとしてるリスティアにイラッときてるよね。
表情には出していないけど、隠しきれてないよね。
「勇者さまのために〜レベル上げ頑張ったよ〜〜」
「褒めて褒めて」と世界チャンピオンがこっちに擦り寄ってくる。
その姿が肩書きにまったく似つかわしくないほどカワイかったので、オレはその頭をナデナデ。
つーか、ホントさらさらふわふわで極上の触り心地だ。いつまでも触っていたくなる。
こんな小さくて細くてカワイイ女の子が人類最強とか、まさに異世界ならではだな。
「それにしても完勝だったよな。むしろ噛ませ犬だったドラゴンたちに同情したいくらいだったな」
「今までいっぱい倒したからね〜」
「そうですね」
「いっぱい倒した?」
頭ナデナデでご機嫌中のリスティアが発した言葉に違和感を覚えたので、オレは問いかけてみた。
「彼らドラゴンは――火・水・風・土――四属性の守護者という概念的存在なのです。一時的に倒すことは可能ですが、その存在を殺しきることは不可能なのです」
「そうだよ〜。だから、倒しても次の日には復活しちゃうんだよね〜」
「その性質を利用して、トライアル&エラーで最速攻略法を確立したのです」
「だから、こんなスムースにいったのか」
オレは納得とともに感心した。
「ふたりで考えたんだよね〜」
「いいえ、ほとんど姉上の独力です」
今までリスティアのことは、アホの子だと思っていた。
だけど、今の話といい、戦闘中は別人になることといい――。
「もしかして、リスティアは戦闘に関しては天才とか?」
「いいえ――」
だが、イーヴァはオレの言葉を否定した。
「天才などではありません。姉上はこう見えて、努力の人なのです。それも、とびっきりの。そうでないと、2ジョブカンストなんてアタマオカシイこと出来るわけありません。しいて言うのであれば、努力の天才と呼ぶのが適切でしょう」
「そうか、頑張ったんだな」
あ、ついにアタマオカシイって認めちゃったよ。
でも、まあ、オレのために努力してくれたのか。
オレは手に力を込め、リスティアの細い髪をワシャワシャにする。
柔らかい桃髪は心地よく手に絡みついてきた。
その行為にリスティアは「あはは」と照れたようにモジモジとしてる。
ええい、カワイイわ。ついでに、ほっぺもツンツンだ。ほっぺ柔らけえ〜〜。
「それだけではありません。姉上は最近は忙しい合間を縫って、毎日一人でドラゴン狩りをしていたのです。なので、本来なら姉上一人でも十分なくらいなのです。私は万が一のためについて行っただけです」
オレはあらためて感心した。
今の会話でリスティアの印象がだいぶ変わった。
どうやら、見た目通りのただの「ふわぽよ」ってわけじゃなさそうだ。
勇者への好感度MAXで、そのために努力する頑張り屋さんなのか……。
世界を救うために献身を厭わない聖女なのか……。
それとも――。
「姉上はそれくらい本気なのです――」
熱のこもった視線を向けるイーヴァは、少し長めの間を空けてから続けた。
「シズク様、どうか姉上の気持ちを理解してあげて下さい。そして――救っていただけないでしょうか」
「ああ、わかったよ」
リスティアの頭をナデ続けながら、オレは深く考えずに返事した。
だけど、イーヴァの言葉の本当の意味をオレが理解したのは、すべてが終わった後だったのだ……。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『俺こそが勇者だ、どやぁ!』
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