第6話 なんか俺のステータスしょぼくない?

 そんな風に彼女に見とれていると、あっという間にいつもの脱力モードに戻ったリスティアはイーヴァと話し出した。


「イーちゃんもー、もっとカワイイの着たら良いのにー」

「これが一番MP消費軽減できるので」

「そんなのーアンフェタをキメちゃえばへっちゃらだよー」

「飲んだあとにダルくなるから、私は嫌いです。服用回数はできる限り減らしたいです」

「えー、ワタシはフワフワして気持ちよくなるから好きだよー」


 なんか物騒な単語が聞こえてきたが、後で聞いた話によると、この世界でのMP回復アイテムの名前だそうだ。


「姉上は普段からフラフラしてるので、もう少し落ちつくべきだと思います」

「えー」


 姉妹の取り留めもない会話を聞きながら、らせん階段を下っていく。

 見た目の印象通り、頼りない姉としっかり者の妹という関係性が会話からも伝わってきた。


 そうそう。そういえば、彼女たちの着替えシーンについても言いたいことがある。


 小部屋を出発する前にリスティアが「じゃあ、わたし達も着替えちゃおー」と言い出した。

 先刻ひん剥かれたばかりの被害者としては、


「はいはい、わかります。今度はオレのターンですね。つーか、これからずっとオレのターンでもノープロっすよ」


 といった感じでニマニマするのは当然至極であろう。


 だが、しかし、現実は無情だった。

 オレの思い虚しく、彼女たちが一言つぶやくと、二人の全身は光が包まれ、あっという間に今の格好にお着替え完了なわけですよ。

 ショトカワンクリで装備チェンジてな感じで、ホントに一瞬で。

 せめてプリティでキュアキュアな方々の変身シーンくらい時間かけてよ。


 というわけで、被害者としては「納得いかん。謝罪を要求する」っつーことで。


「なにそれ!?」

「換装スキルですが?」

「だよ〜」

「なに、その便利スキル!? オレも欲しいっ!」

「勇者さまもできるよ〜」

「はっ!?!?」

「『勇者の指輪』の機能で、シズク様も使えますが」

「へっ!?!?!?」

「うん、そだよ〜」


 衝撃の事実発覚――――。


「…………。じゃあ、なんで、オレはさっきひん剥かれたんだ?」

「……………………」

「……………………」


 うわ、二人とも露骨に目をそらしやがった。


「時間がありませんので、この件につきまして後ほどということで……」


 ホント便利ですね、その言葉!

 つーか、時間ないんだったら、ひん剥いてんじゃねえよ!!


 まあ、羞恥プレイだったことは間違いないけど、不愉快だったかと問われれば、むしろ、すべすべな四本の手がひんやりと気持ちよくて、ちょっとゾクゾクしなかったと言えば嘘になるわけで……。


 よし。

 ここは、寛大な心で矛を収めることにしておこう。


 ついでにいうと、『勇者の指輪』には『換装』機能の他にも『収納』機能もついていた。

 色々と収納出来るらしいから、早速『勇者カード』と『攻略ガイド』を仕舞っておいた。つーことで現在のオレは手ぶら状態。片腕に重い荷物(リスティア)がまとわりついているだけだ。

 ちなみに、収納状態でも2つのアイテムは使用可能で、『ステータス・オープン』と唱えれば、オレのステータス(日本語表記)の半透過ウィンドウが視界前方に表示される。閉じるときは『ステータス・クローズ』って唱えればいいだけ。

 同じように、『ガイド・オープン』と唱えば『攻略ガイド』が表示されたウィンドウが現れる。

 とっても便利な仕様だった。


 そういえば、現在のオレのステータスは――。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 シズク・サクマ

 勇者 LV1


 HP  18

 MP  12

 STR  5

 DEF  4(+1)

 AGI  4(+1)

 DEX  3

 INT  4


 EQUIP

 ・布の服(DEF+1)

 ・布の靴(AGI+1)

 ・勇者の指輪


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 とまあ、こんな感じで思いっきりショボショボな初期ステータスだ。

 いくら勇者といえどLV1だと、一般人よりちょいマシな程度だそうだ。

 でも、こっから勇者補正な成長チートで爆上げらしいから、乞うご期待!


 ついでにいうと、姫様たちから着せられた布の服と靴。

 見かけは貧相だけど実は高性能だったり、とかちょっと期待してたけど……。

 うん。まったくもって見た目通りの性能だった。しょぼん。


 自分のショボいステータスに落ち込んでいたけど、そんなことよりも大事なことがあったと思い出した。


「ねえねえ」

「はい、なんでしょうか」

「契約の内容を教えてよ」


 気になっていたことをイーヴァに尋ねてみる。

 さっき尋ねた時は「時間がありませんので」で流されたけど、移動中の今なら時間は問題ないはずだ。


「シズク様には魔王を封印してもらうという契約です。そして、その報酬として、シズク様は姉上を娶ることができます」

「マジ?」


 こんなカワイイ子がオレのお嫁さんに?


「マジです」

「そうだよ〜、勇者さまヨロシクね〜」

「もちろん、姉上ではなく他の相手をご所望ならば、その者でも構いません。できれば既婚者は避けていただければありがたいのですが」

「じゃあ、イーヴァちゃんを選んでもいいの?」

「もちろんです」


 イーヴァは表情を変えずに即答する。


「む〜」


 リスティアがふくれっ面になる。


「もしもの話だよ」


 オレがそう言うとリスティアは機嫌を直した。

 ちょろいな。


 でも、そんな美味しいクリア報酬を突きつけられても現実感が薄い。

 魔王を封印するまでに、本当にリスティアと結ばれるのが最良なのか、ちゃんと考えておかないとな。


「到着いたしました」


 結構長く感じられたらせん階段もようやく終わり、眼前には紋様の刻まれた重たそうな石扉があり、二人の兵がそれを守るように立っていた。

 我々の姿に気づいた兵たちは両脇に下がって道をあける。

 歩み寄ったイーヴァが石扉に手をかざすと、刻まれた紋様が青白く発光し――石扉は音もなく開いた。


「では、参りましょう」


 イーヴァの言葉にうながされ、オレたちは『転移の間』に足を踏み入れた。


 ――ミッション1クリア――






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『勇者さま〜、ロリコンはメッだよ〜』


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