第5話 なんか俺だけ装備しょぼくない?

 ――残り時間5:30


【ミッション1】 王城地下にある『転移の間』に移動せよ(所要時間10分)。


 『攻略ガイド』に書かれていた最初のミッションはこれだった。


 というわけで、オレたちは今、その『転移の間』に向かって、城内のらせん階段を下っている。

 ちなみに、『攻略ガイド』には精緻な地図が描かれ、道順も記載されていたが、イーヴァが先導して案内してくれているので、オレはその後をついて行くだけだった。

 もう一人のリスティアはと言えば、オレの腕に抱きつくようにして鎧をカチャカチャ鳴らしている。おかげで、歩きにくい事この上ない。

 陽が差さないこの階段は、ザ・初期装備な布の服姿のオレには少し肌寒く、もこもこと暖かそうなローブに全身を包まれたイーヴァがちょっと羨ましい。


 そう。

 二人はさっきの小部屋を出る前にお着替え済みだった。

 お姫様なドレス姿から一転、今はファンタジーRPGライクな戦闘スタイルだ。


 リスティアはやたら鋭角的なとんがりがカッコいい、鈍く黒光りしている全身鎧姿だ。

 なんでも、もともとは『装魔槍ヴァグニール』とかいう名の一本の槍らしいが、キーワードを唱えることによって幾つかの形態に変形可能らしい。なにそれカッコいい。

 今は兜を装着していないバージョンなので可愛い顔を眺められるけれど、戦闘時には今の姿にプラスフルフェイスの兜と槍装備の完全状態になるんだって。

 だから、兜を被ったときに邪魔にならないように、ふわゆるロングなリスティアの桃色髪は、すっきりとまとめ上げられている。むき出しの白いうなじがセクシーだ。


 そんな派手でカッコいいリスティアとは対照的に、イーヴァは地味な格好をしている。

 フード付きの白無地もこもこローブに全身をすっぽりと覆われ、右手には彼女の背丈より大きい無骨な木の杖を持っている。

 一見すると地味な姿だけど、目深にフードを被ったその様は、無口な妹系魔法使いをパーフェクトに体現していて、イーヴァにとてもよく似合っていた。


 とまあ、そういう感じで、二人ともすげーカッケーわけですよ。

 レベル1丸出しな格好のオレと違って、「これから魔王を倒しに行きますよ」って格好をちゃんとしてるのよ。


「つーかさー、この差はちょっとヒドくない? オレだけ完全に浮いてない?」


 「平服でお越しください」って言葉を信じて行ったら、周りがみんなスーツ着てたみたいな疎外感でいっぱいだよ。


「だいじょ〜ぶだよ〜。勇者さまは〜なに着ても似合うから〜」

「さっきもそうやって誤魔化されたけどさ――」

「大丈夫です。すぐにちゃんとした装備も手に入りますから」

「そうは言ってもさー、それまでが心配なんだよ。二人ともこれから戦いに行く気満々な格好してるじゃん。それなのに、オレだけこの格好だよ? ただでさえ、レベル1で激ヨワなんだから、こんな格好だったら、オレ一発で死んじゃうよ?」

「大丈夫です。問題ありません」

「うん。大丈夫。勇者さまには、わたしが傷ひとつ付けさせないから」


 急にリスティアが今までにない真剣な態度をとったから、オレはそれ以上追求できなかった。

 つーか、普段のふわゆるぽわーんなリスティアも可愛くて素敵だけど、真剣なリスティアも今のまとめ髪鎧姿と相まってカッコよくていいな。

 そんな風に彼女に見とれていると、あっという間にいつもの脱力モードに戻ったリスティアはイーヴァと話し出した。









   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『なんか俺のステータスしょぼくない?』


楽しんでいただけましたら、フォロー、★評価お願いしますm(_ _)m

本作品を一人でも多くの方に読んで頂きたいですので、ご協力いただければ幸いですm(_ _)m


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る