第4話 左手の薬指に指輪はめられたけど大丈夫?
というわけで、初仕事は無事完了いたしました。
まさか、異世界に来て勇者としての初仕事がこんなんだとは、想像もしていなかったよ!
ちなみに、今着ているのは女騎士ラーちゃんが用意してくれていたもので、ファンタジーRPGの初期装備みたいな布の服だ。
いや、オカシイだろ?
オレ、勇者だよ?
これから魔王を倒しに行くんだよ?
どう考えても対スライム用装備だろ、コレ!!
「なあ、もっとちゃんとした装備ないのか?」
「大丈夫だよ〜。その格好も似合っているよ〜。勇者さまカッコいい〜〜〜」
「時間がありませんので」
リスティアは気にしてるところがズレているし、イーヴァにはお馴染みの言葉で流された。
はあ、言うだけムダか……。
「シズク様の所持品はこちらで厳重に保管いたしますので、ご安心ください」
「ああ、任せた」
所持品っていっても、バイト中に召喚されたから、ポケットに入っていたスマホ、財布、家の鍵くらいだ。
貴重品っちゃー貴重品だけど、こっちの世界じゃ全く使い途がないから、帰るときに返してもらえればなんの問題もない。
むしろ、途中でうっかり落とすなんてマヌケなことになるよりは、厳重警備な城の中で保管しておいてもらった方がよっぽど安全だろう。
そう思って任せたのだが……。
リスティアさん、オレが着ていた服に顔をうずめてクンカクンカしながら蕩けたような表情で「えへへ、勇者さまのにおいだあ〜〜〜」とかつぶやくの、恥ずかしいからマジでやめてもらえませんかねえ。全然安心できないんだけどっ!!!
「次はこれです」
「あー、だめー」
イーヴァが取り出した銀色に輝くソレに、リスティアが飛びついて奪いとった。
「それはわたしの役目なんだからー。はい、勇者さま、左手出して〜」
言うやいなや、オレの手を取ったリスティアは、オレの左手薬指にソレ――指輪を嵌めた。
「きゃ〜、やっちゃいました〜〜〜」
止める間もなくつけられちゃったけど、もしやこれって……。
「『勇者の指輪』です。それを装着することによって、シズク様は勇者の能力を発揮できるようになるのです」
そうだよな!
RPGの装備アイテム的なモノだよな!
嵌められた場所が場所だけに、そういう意味かとちょっと焦ったけど、たまたまだったんだよな。
うん。安心した――――って、リスティアの方を見たら、「あとは、勇者さまがわたしに……」とかブツブツつぶやきながら蕩け顔でトリップ中。
全然安心できねえ!
……まあ、深く考えるとアレなんで、ここはスルーの方向で。
「でも、その割にはなにも変わったようには思えないけど……」
『勇者の指輪』と言われても、急にチカラが漲ってきたとか、そんな風に強くなった感じはまったくしない。
「まだレベル1ですから」
イーヴァがカードサイズのプレートを差し出してきた。
薄い金属でできていて頑丈そうな、そのカードを受け取る。
眺めてみると、先ほどの契約書にあったような見慣れぬ文字でなにか書かれている。
「これは?」
「『勇者カード』です。シズク様のステータスが記載されております」
「…………読めないんだけど」
「後で詳しく説明いたします。今は――時間がありませんので」
すげー気になるところだけど、またもや、お約束の言葉で却下された。
「そして、最後にこちらを」
手渡されたのは小冊子だった。
その小冊子はA4サイズのコピー用紙をホッチキスで止めた薄いもので、その表紙には
『勇者さま専用攻略ガイド Vol.1 ―地上世界編―』
と可愛らしい手書き文字で書かれていた。
なぜオレにもそれが読めたかというと、日本語で書かれていたからだ。
この世界には違和感バリバリのその存在にオレが戸惑っていると、いつの間にか復活したリスティアが得意顔で横から覗き込んできた。
「わたしが作ったんだよ〜、これ〜」
犯人はオマエかー、と心の中でツッコみつつ、ため息をついて気分一新。
「この『攻略ガイド』に従って、魔王を封印していただきます。所要時間は6時間もかかりません。というか、6時間以内に封印しないと世界は滅亡してしまいます」
いきなりシリアスなことを伝えられ、オレはゴクリと唾を飲んだ。
「とはいえ、難所はこちらでクリアしておきましたので、特に困難もないかと思われます」
イーヴァが簡単そうにそう告げる。
オレはホッとした。
さすがはベリーイージーモード。ファミコン時代RPGのRTA並の所要時間。
めんどくさがり屋のオレにはうってつけだ。
あんま長いと、途中で飽きちゃうからな。
よし、ちゃっちゃとクリアしちゃいますか。
そう思い『攻略ガイド』をパラパラめくろうとしたが、ページ同士がくっついているのか、最初のページしかめくれなかった。
「あれ?」
「ネタバレはだめだよ〜〜」
リスティアの説明によると、ネタバレ防止のために、「次にやるべきこと」までしか読めなくないという、ムダに凝っている仕様だそうだ。
ともあれ、オレが次にやるべきことは――。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『なんか俺だけ装備しょぼくない?』
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