第3話 お着替えタイムという名のセクハラでは?
二人の姫様に先導されたオレは、謁見の間を離れ、城内の廊下を歩く。
そういえば、王様と王妃様には挨拶すらしていなかったな。
二人ともオレと姫様たちのやり取りに口を挟んでくることもなく、穏やかな微笑みとともに暖かく見守っている感じだったし、オレのことは娘達に任せきっているんだろう。
勇者とか、魔王とか、国の一大事だと思うんだけど、それでいいのか?
まあ、情報がほとんどない現時点では、考えてもムダか。
ちなみに、王妃様はリスティアと同じ桃色がかったウェービーな金髪で、顔のつくりもリスティアにそっくりだったが、ふわゆるぽわーんな娘とは対照的にしっとりと落ち着いた熟年の色気を身にまとっていた。
そんなことを考えながらしばらく歩き、たどり着いたのは十畳ほどの小部屋だった。
「お待ちしておりました。準備はそちらに整っております」
口を開いたのは室内に控えていた騎士っぽい格好の女性だ。
立派な鎧に全身を包み、腰には剣を佩いている。
ショートの赤髪とシャープな顔立ちが凛々しい、オレより少し年上くらいの美人なお姉さんだった。この世界顔面偏差値高すぎる。
「ラーちゃん、おつー」
「では、小官は任務に復帰させていただきます」
「頼みます」
「いてらー」
「勇者殿、失礼致す」
一礼とともに颯爽と立ち去っていった女性騎士の通称ラーちゃん。
いかにも武人な立ち居振る舞いがカッケーなあと彼女の後ろ姿に見惚れていたら、頬を柔らかい指でキツく摘まれた。
「も〜、浮気はダメだよ〜」
「いや、そんなんじゃないって」
「いいわけむよ〜」
浮気もなにもあったもんじゃないだろ、と思ったけど、頬が痛いからとりあえず謝っておこう。
まあ、リスティアもほっぺをぷくっと膨らませて怒ってますポーズを取ってはいるけど、本気で怒っているわけではなさそうだ。
「ごめんごめん」
「も〜、ダメだからね〜」
「はいはい、気をつけます」
案の定、リスティアは簡単に許してくれた。
なんか、こんなやり取りもイチャイチャしてるみたいで、オレとしては結構楽しい。
「姉上、時間がありません」
「あー、そーだったねー」
だが、そんな楽しい時間も、イーヴァのひと声で中断された。
「シズク様。早速ですが、勇者としての初仕事です」
おっ、いよいよかと思い、オレはゴクリとつばを飲みこんだ。
我ながら結構緊張しているようだ。
さて、なにから始まるんだろうか。
「それでは〜、お待ちかねの〜、勇者さまの〜、おっきがっえタ〜イム〜〜〜〜〜」
「へっ?」
気の抜けるような口調で告げられ、脱力したオレは思わず情けない声を上げてしまった。
あっけにとられるオレを余所に、四本の細い手が伸びてくる。
「ちょ、まっ」
「イーちゃんだめだよー、わたしが全部やるんだからー」
「時間がありませんので」
嬉々としてセクハラ気味なボディタッチでせまるリスティアと、淡々と事務的に攻めてくるイーヴァ。
対照的な二人によって、Tシャツ&デニムパンツ姿だったオレは、あっという間にひん剥かれてしまった。
ちなみに、オレの必死な抵抗によってトランクスだけはなんとか勘弁してもらえた。
オレのトランクスを狙うリスティアの目が、完全にエモノを前にした肉食獣のソレだったから、ちょっと怖かったよ。
そういえば、着ていた服装と思い出せる記憶から判断するに、オレの召喚が行われたのは、どうやら古本屋でのバイト中、いつものようにカウンターでうたた寝をしてた際のようだ。
古本屋の店員はオレだけ。店長のジジイは店をオレにぶん投げて恒例のパチ屋通いだ。
今頃あの店どうなってんだろ?
まあ、客なんてほとんど来ないから、きっと大丈夫だろ。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『左手の薬指に指輪はめられたけど大丈夫?』
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