第十一話 ティアを看病する。
「お、レミが一人でいるなんて珍しいじゃん。相方のティアはどうしたんだよ?」
いっつも二人一緒なはずなのに、今日はレミ一人で買い物カゴ持って歩いてやがる。
薄い水色の髪を後ろで縛ったレミは「こんにちは」と隠してない方の左目を細めた。
「ティアがね、病気になっちゃったの」
「病気? それって結構重いのか?」
「ううん、軽…………うん、結構重い病気」
重い病気か、アイツ口悪いからなぁ、きっと天罰だろ。
いつも二人一緒のレミが病気になってないんだ、そうに決まってる。
「だからねユーティくん」
「おう」
「ユーティくんが看病しに行ってあげると、ティア喜ぶと思うんだ」
「俺が?」
「うん、ああ見えてティアって寂しがり屋だから、絶対に喜ぶと思うよ」
はいこれ、家の鍵。そう言われて手渡された鍵を片手に、俺は二人の家へとやってきた。
レミはまだこれから買い物に行かないといけないらしく、ティアの様子を見て欲しいと。
鍵っ子なんだよな、あの二人。
両親働きに出てて、家事全部やらないといけないんだとか前に言ってたっけ。
「助け合い精神って大事だよな」
この前もニーナの家を手伝ったし、こうしてレミとティアの手伝いをするのも悪くはないな。
という訳で家の中に入るも、シーンとしてる。
二階建ての家だから、二階にいんのかな?
階段を上ると、コホッ、コホッと咳込む声が聞こえてきた。
『レミとティアのお部屋』と書かれた可愛いレリーフがある。ここか。
「入るぞー」
中に入ると、木製の床に丸い絨毯が敷かれていて、その上にはローテーブルが一つ。
部屋の左右にベッドがあって、右側のベッドがこんもりとしてる。右がティアか。
左は当然ながら空っぽだ、寝起きできちんとシーツまで畳んであるのは、流石レミだな。
返事がなかったから、寝てんだろうなとは思ったけども。
レミから様子を見てと言われた以上、顔色ぐらいは見ておくか。
赤い髪が枕元いっぱいに広がってる、寝汗でくしゅってしてて、前髪が顔にべっとりだ。
寝てるな。でも呼吸が結構荒々しい。重い病気って本当なんだな。
ベッドのすぐ脇の小タンスに、桶に張った水とタオルが置いてある。
これで寝汗を拭いてやるぐらいしか出来ねぇかな。
きゅっと絞ってから、額の汗を拭きふき。
「……ん」
起きたかな? まぁいいや、出来る事くらいはしておくか。
「ほら、他も拭くから、寝間着脱いで」
「……うん」
意外と素直だな。
布団の中でボタンを外すと、ティアは着ている服を全部脱いだ。
ベッド下に落とされたパジャマはもちろん、下着まで全部寝汗で湿ってら。
裸になったティアは、俺に背中を向けたままベッドの上に座る。
しかし女の子って綺麗な身体してるんだな。
柔らかくってモチモチしてて、なのにサラサラでスベスベだ。
背中から前も全部拭いて、お尻から足まで拭きあげてと。
拭き終わると倒れ込むように布団の上で横になっちまった。
まだ下着はいてねぇのに、面倒だな。
「ティア、洋服着るの自分で出来るか?」
「……ううん」
「じゃあコッチで勝手に着せるからな。あと寝る前にトイレ行っといた方がいいぜ?」
「…………」
「しょうがねぇな、水魔術で出させてやっか」
「…………ん? レミ、じゃないの?」
「ユーティだけど? ほれ、手を出せよ」
それまで寝くたばってたティアが、顏真っ赤にしながら飛び起きてきた。
「な、なななななな、なんで!? なんで変態ユーティが部屋に……部屋、へ、あぅ」
「ほれ、無理すんな。トイレまで行けないんだろ? 窓から出しちまえばいいよ」
「え、あ、あああ、私、服、何も着てない」
「別に気にすんなよ、後で俺の裸も見せてやっから。ほれ、手出して、いくぞー」
「い、いく? いくって、どこに、ユーティ、アンタ何を――――」
水魔術の訓練してる時に、父親から教えてもらったんだ。
片方の手首を掴んで二人で水魔術を使うと、合体魔術になるってな。
「ティアの身体の中の水、全部出しますオシッコビーーーーム!」
「ななななな⁉ なに、なになになになになんなのよこれー!?」
開け放たれた窓から、二人の合体水魔術がジョボボボボボボボッ! って勢いよく出た。
俺は別にしたくなかったから、全部ティアのだな。相当溜まってたんじゃん。
出し切ったのか、ティアはベッドに手をついて、肩ではぁはぁ息をしてら。
「雫は舐めてと。こんなもんかな、早く着替えておけよ」
「……ユーティ」
「ん?」
「……責任、取ってよね」
「責任? ああ、別に構わねぇぞ」
「……なら、別にいい」
ティアの奴、小タンスから下着や寝間着を取り出すと、布団の中で秒で着替えやがった。
これで看病終わりって事でいいんかな、結構元気そうだし、良かった良かった。
「ティア」
「……なに」
「早く元気になれよ」
「……うん」
「じゃ、またな」
――――その後
「ユーティくん、家に来たんだ?」
「来た……レミだと思って全部やらせちゃった」
「あはは、ごめんね。でもユーティくん、優しかったでしょ?」
「……うん」
「そうなんだよー? あの子は可愛いの。あまりイジメないようにしないとね」
やっぱり、レミの仕業だったんだ。
急にユーティが家に来るはずがないし、風邪ひいたからって看病しに来るような奴じゃない。
そう、分かってたけど。
「……ねぇ、レミ」
「うん?」
「私、ユーティに責任取ってもらう事にしたから」
「うーん?」
「そういう事だから。ユーティのこと、レミが取ったらダメだからね」
「……ふふっ、それはどうかなぁ?」
一番の敵はお姉ちゃんであるレミなのかもしれない。
絶対に、負けないようにしないと。
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