第八話 俺、また何かやっちゃいました?
俺の家に水魔術教団の使者とやらがやってきた。
立派な馬車にスケスケな洋服を身にまとったお姉さま達の集団だ。
村の男たちが無言で集まってしまう程度にはスケスケだった。
「ヒルネ様、水魔術教団を御救い下さい!」
沢山のおっぱいが重力に従いながら下を向いている。
違うか、お姉さま達が母親に向かって頭を下げているんだ。
ちなみにヒルネってのは俺の母親の名前だな。
「御顔を上げて下さい。私はもう旦那と婚約し、水魔術教団を去った身です」
「ですが、今の水魔術教団があるのはヒルネ様あってのこと」
「そして今一度、水魔術教団を御救い下さい!」
そしてもう一度揺れるおっぱいたち、スゲー。
「あの人達何しに来たの?」
「知らね、水魔術教団って集団らしいけどな」
「水魔術教団の人が、どうしてユーティくんの家に集まってるの?」
「ママに助けて欲しいんだと、知恵を貸して欲しいとか?」
家の中が綺麗なお姉さんだらけになって居心地が良かったのに、母親に大事な話をするからと追い出されてしまった。
直後、隣のニーナと、レミとティアのいつもの三人に取り囲まれ質問攻めに。
村の大人共も集まってるし、不釣り合いの馬車まで停まってれば、そりゃ気になるよな。
「ユーティのママって、水魔術教えるの上手だもんね」
「うん、私も……水魔術使えるよ」
「私だって使えるわよ。レミよりも早く使えるようになったんだからね」
ウチの村の女子はほぼ全員が水魔術を使えるようになったんだよな。
農村に生きる女として、水魔術は必要不可欠だって母親が全員に教えたんだと。
便利だもんなぁ、水魔術。男は覚えられる人が少ないみたいだけど。
「ほらユーティくん、レミの水、飲む?」
「飲む……美味い」
「あ、ティアだって出せるし、ほらユーティ」
「……ん、甘い」
「私だって出せるよ、ほらユーティ」
「ニーナのは、なんかミルクの味がする」
「あ、午前中の牛の乳が残ってたかも」
作業終わったら手を洗っとけよな。
牛乳好きだから飲むけど。
ニーナ家の牧場、丸く固められた藁の上で三人お喋りしてると、家から一人だけオジサンが外に出てきた。服装的に水魔術教団の人なんだろうな、なんか俯いてるけど。
「どしたいオッサン」
「君は……ああ、ヒルネ様のご子息か」
自分の母親に様が付くのは、なんだか気分がいいな。
母親の水魔術の威力凄かったもんな、様が付くのも納得だ。
「水魔術教団の魔法水がね、売れなくなってしまったんだ」
「教団の魔法水?」
「ああ、私達水魔術教団は魔法水を精製し、それを売ることで活動費に充てているんだが、最近は川の水をそのまま飲む人達が増えてしまってね。川の水をそのまま飲むなんて、どんな病気になるか分からない。絶対にしてはいけないことなんだが」
病気になるのも構わずに、川の水を飲むって事か?
要は、お金を出したくないって事なのかな。
「それってつまり、お金を払いたくないって事ですよね」
俺が考えてたことそのままに、ニーナが口を挟んできた。
「つまりはそういう事なんだと思う。それで魔法水が売れずに、水魔術教団としての活動費はどんどん目減りしていく一方でしてね。ヒルネ様に妙案がないか尋ねてきたんだけど……こんなこと、子供である君たちに言った所でしょうがないんだけどさ」
そう言うと、ピシャリおじさんは首裏を叩く。
「ふぅん、ママの水は買ってでも飲みたいって言う人がいたくらいなのになぁ」
「そんな事を言う人がいたのかい? さすがはヒルネ様だなぁ」
「水魔術の水ってオシッコみたいなもんなんだろ? 身体の中の水を外に出すんだからさ」
口にした途端、ちょっとの間が空いた。
そして次の瞬間「変態!」ってニーナに頭を叩かれ「スケベ!」ってティアにビンタされた。
なんでだ。
「君、その言葉……いや、ヒルネ様のご子息が言っているのだから、きっと間違いないはず」
「……?」
「ありがとう、何とかなりそうな気がしてきたよ」
「おお? そりゃ良かったな」
オジサン、俺の話を聞くや否や走って帰っちまった。
後日、母親と俺宛に水魔術教団から感謝状とお礼の品が沢山届いた。
「……ユー君、何か喋った?」
その日、ちょっとだけ母親の目が怖かったのを、今でもよく覚えている。
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