第七話 ちんちんちっちゃくない。

 レミに何か言われた気がするが、俺は全然気にしてない。

 ちんちんがちっちゃいとか、全然気にしてない。

 かれこれ三日間くらい食欲ないし、ふとした時に涙が出るけど、全然気にしてない。

 

「どうしたんだユーティ、元気ないな」

「パパ……」

「元気がない時は風呂に入るのが一番だ、久しぶりにパパと一緒に入るか?」

「うん」


 父親とお風呂に入るのは久しぶりだ。

 五歳になってから入ってないから、本当に久しぶりだ。

 思えば、いつもパパの腰にはタオルが巻かれていた。

 大人のちんちんがどんなものか、この目で確かめる必要がある。

 

 ――ぼろん。


 ちんちんちっちゃくない。

 なんだこれは。


「ユーティ?」

「パパ……ちんちん、触ってもいい?」

「ちんちんを? 別に構わんが」


 浴室の洗い場に座り込みながら、父親のをむにむにと触れる。

 柔らかくてシワがあって、先っちょの皮がふやけてる感じがする。

 触っていると、次第に父親のそれが自意識を持ったみたいに膨れ上がってきた。

 

「そこまでだユーティ」

「パパ」

「それ以上はダメだ」


 本気で怒っている時の目だった。

 俺が手を離すと、父親は無言のままお湯を体にかけ、湯舟に浸かった。 

 父親の蔵書はいつも秘部にモザイクがかけられている。

 いつも不思議に思っていた、モザイクが掛けられているとはいえ、ちんちんが違い過ぎると。


「いいかいユーティ、男のちんちんは二回変身する事が出来る」

「変身」

「ああ、いまユーティが見たのが一回目の変身だ。二回目の変身は大人になってから出来るようになる。いまは出来ないかもしれないが、大丈夫、ユーティはパパの子供だからな」


 男のちんちんは二回変身が出来る。

 なんと素晴らしい情報なのだろうか。


 父親の言葉に感銘していると「二人だけで入るなんてズルい!」と母親もお風呂に入ってきた。

 相も変わらずのナイスバディなのだろうけど、悲しいかな母親は論外だ。


「ユーティ、もう一人で体拭けるよな?」

「うん」

「じゃあ先に出てなさい、パパはママを待つから」

「はい」


 立ち上がった瞬間、俺は見た。

 二回目の変身、アレが真の男たる姿か。


 ――ごくり。


 思わず生唾を飲みながら、一人浴室を後にする。

 多分、いや当分両親はお風呂から出て来ないだろう。

 時間はまだ早い、あの二人ならまだ外で家事手伝いしているはず。


 急ぎ体を拭き、俺は一人外へと走った。

 そして見つけたんだ、夕暮れ時に買い物かごを手にしたレミとティアの二人を。


「おい、お前たち!」

「きゃ! ……びっくりしたぁ、変態ユーティじゃない、急に驚かさないでよ!」

「ユーティくん、こんばんは」

「いいかよく聞け! 俺のちんちんは、まだ二回変身できるんだ!」


 買い物かごを手にしたまま、二人してきょとんとした顔で俺を見る。


「アンタなに言ってんの?」

「二回……変身?」

「分からないか、分からないよな。だが、そういう事なんだ! だから、俺のちんちんはちっちゃくない! いずれ大きくなってやるんだからな!」


 言ってやったぜ……これでもうちんちんちっちゃいって言わないだろう。

 勝ち誇った顔をしていると、レミが買い物かごを地面に置いてトコトコやってきた。


「ユーティくん」

「なんだ」


 俺の耳に手を当て、レミは小声でこう言った。


(じゃあ、大きくなったら、また見せてね?)


「え?」

「約束だよ……? またね、ユーティくん」


「アンタユーティと何約束したのよ?」

「ふふっ、内緒。だってユーティくんって可愛いから」

「えー? あんなののどこが可愛いのよ、あんなのただの変態じゃない」

「ティアも可愛いよ」

「わ、私が可愛いってどういう意味よ」

「そのままの意味……だよ?」

「はぁ……まったくあんたはもう」


 みたいな会話を二人延々としながら俺の前から居なくなった。

 なんだろう、負けた気がする。ちくしょう。


 帰り際、何と無しにニーナの家を見ると、遠目に乳しぼりをしているニーナを見つけた。

 丁度いいからニーナの奴にも教えてやろうと乗り込むと「全裸で何しにきたんだアンタは!」とビンタされた。


 俺、全裸だったのか。

 気づかなかった……。

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