第四話 俺、女湯で人間蒸気機関として働きます。

 ボッコボコにされた俺が一晩考え抜いた結果、魔術も鍛える必要があると判断した。

 魔王と戦うのに肉弾戦だけで勝てるはずがない、そんなの当たり前のことだ。


 俺の体には父親の炎の素質と、母親の水の素質がしっかと受け継がれている。

 父親の魔術:紅蓮の炎は村を襲うゴブリンを焼き尽くす程に強力だ。

 母親の魔術:清楚たる由縁は、食器を洗ったり風呂の水を足すのに重宝している。


 たまに飲み水として飲まされるが、結構美味い。

 その事を村のオジサン達に話をしたところ、売ってくれと言われて母親に伝えた事がある。

 後日オジサンの家で家族会議が開かれたとか聞いたが、多分買ったんだろう。

 聖水とか呼ばれてたみたいだが、母親の水は美味いからな、納得だ。


 何はともあれ俺の身体には炎と水、両方の性質が備わっているのだ。

 魔術とは手のひらにマナを収縮させて、呪文と共に放出することで発動する。

 集中しろ、俺にはきっと他の奴等には出来ない何かがある。

 火を使う時は外でしなさいという言いつけを守り、外で練習だ。


「今度は何を始めたの」

「魔術の訓練」

「へぇ、そんなの出来るんだ」


 家畜の世話をしながらテクテクと歩いてきたニーナこと女オーガが話かけてきやがる。

 ニーナめ、後で俺の魔術:紅蓮の炎でそのサロペット燃やし尽くしてやるからな。

 昨日の復讐だ……父親の本に書いてあった、信念が強ければ魔術の威力は上がると。

 服を燃やす、ニーナの服を燃やす、ニーナの裸を見る、女の子の裸が見たい!


「うおおおおおぉ! 魔術! 紅蓮の炎!」


 すわっと手のひらが輝いて、ボシュウって白い煙が出た。


「なにそれ、魔術:にぎりっぺ?」

「んな訳ねぇだろうが! 魔術:清楚たる由縁!」


 ボシュウ。


「ユーティ君、サイテー」


 ボシュウ。

 ボシュウ。

 ボシュウ。


「にぎりっぺ製造機じゃん……」

「おかしい、なぜだ……俺の身体には両親の炎と水、両方が備わっているはず」

「だからなんじゃないの? 水と炎って反発するから、蒸発してるとか?」


 水と炎で蒸発? そんな馬鹿な。

 しかし何回やっても蒸気しか出ない。


 ニーナがいなくなった後も悔しくて一人魔術の練習をした。

 その内に村人の大人に見つかって、なぜか温泉へと連れて来られた。


「ここで頼むよ」


 ここは温泉における大人の楽園、サウナと呼ばれる場所なのではないか。

 とりあえず言われるがままに魔術:にぎりっぺを披露する。

 俺の手から無限に蒸気が出るのを見て、汗が出ていいねぇと喜ばれた。


「ユーティ君は人間蒸気機関だね」


 どうやら俺は人間蒸気機関らしい。

 違う、俺の魔術はサウナをスチームサウナにする為の魔術じゃない。

 しかもオッサンたちの集いの密室なんか暑いし臭いしたまったもんじゃない。

 とっとと逃げようとしたら、出たところをお姉さんに捕まった。


「今度はこっちも宜しくね」


 サウナ万歳。なんだこのサウナ良い匂いしかしねぇ。

 裸のお姉さんたちがいるサウナ室で俺は全力を出し続けた。

 父親の本に書いてある事は本当だった、信念が強ければ魔術の威力は上がる。


 女風呂のサウナにこもること五時間。

 俺は限界まで魔術を使い続け、裸のお姉さんに囲まれながら意識を失った。

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