幼き日に

あの日はいつもより少し強めの太陽が僕の肌を強く照りつけて、汗が僕の頬をダラダラと滝のように流れてて、母がよく僕の汗を拭ったり、水を飲ませてた。


遊び疲れた僕を母が抱っこで日陰にあるベンチまで運び、涼んでいた時、僕の目には列を為して巣まで行進するアリの群れが目にとまった。


当時の僕にとってはとても珍しく、そして興味をひく光景だった。

僕はそれを膝を曲げながらただただ見ているだけだった。


しかし急に良からぬ考えが頭の中をよぎった


「踏んづけたいな」と


そしてその時の幼い僕が思いとどまるわけもなく、ジャンプして踏み付けてしまった。

そしてそれを何度も何度も繰り返した。


そんな僕の行動に気づいた母がすぐに僕を抱き上げて、僕を叱った。

僕はなんで怒られたのかわからずただ泣くだけだった。

僕がやっと泣き止んだ時、母はこういった


「あのね、アリさんはたしかに小さいけどアッチャンと同じ生き物なんだよ、アッチャンだって知らない子に急にたたかれたら嫌でしょ」

僕はその言葉にしっかりとうなずいた。


まあその後、虫いじめをやめることはある程度大きくなるまで辞めなかったが


そんな子供の時の思い出を振り返ってみて、あの時の自分はイノチってやつが理解出来てなかったんだなと思った。

でもあの歳でそれを理解できる子なんていないよな。今の俺ももしかしたら命ってやつを

分かったつもりでいるんじゃないかと、随分自分には似つかわしくない哲学的なことを考えてしまった。


目線を下に移すと、アリの群れは今セコセコとセミの死骸を分解して、そして自分たちの巣に運んでいるようだった。

僕はそこにさっきカバンから取り出したカロリーメイトを一つ、小さめのサイズにしてアリたちにあの時の謝罪の意をこめて放り投げた。


スマホを取り出して見るともう六時だった。

僕はおもむろにベンチから立ち、急いで帰路についた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アリ殺し やきとり @yakitori5422

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ