ギルドとクラン
次に目を開けると、そこはステラの像の足下だった。
場所もあの白い空間から元の場所に戻っている。
振り返れば、階段の下には先ほどよりも多くの人が並んでおり本当に自分は運がよかったのだと実感した。
階段下のアリサと合流すると、彼女は綺麗な礼を一つ。
「オロチ様、お疲れさまでした! いかがでしたか?」
「ああ、無事受け取ることが出来たみたいだ。現人神には会えなかったがな」
「いえ、それが普通ですので……! 期待させるようなことを言ってしまって申し訳ありません……」
「いや、気にしないでくれ。……それより、これからどうすればいいんだ?」
「あっ、そうでした! オロチ様は探究者志望とのことでしたが……具体的にはどちらに?」
「冒険者になろうと思っている」
「なるほど!」と手を打ったアリサは、オレの後ろ腰の大太刀を見て納得したように何度か首肯する。
そして後ろを振り返り、オレたちが先ほど通ってきた道を指す。
「あちらは先ほど通った通路で、ヘリオスの南区に続いています。私たちはヘリオスの南区画から星神殿に来たのです。南区画は初等区と呼ばれていて、主に居住区としての役割が強く、外来のお客様が多くいらっしゃいます」
そして、と円形の星神殿を見回すように手を別の方向に移す。
手が示す先には、通ってきたのと同じような通路が他にも三つ。
合計四つの通路が四方に伸びていた。
「東区画は商業区としての機能が主で、【錬金師ギルド】や【商人ギルド】など、様々な商いに関するギルドが運営しております。観光目的の方々がいらっしゃるのは東区画が多いですね。西区画は高等区となっており、富裕層や貴族様などがお住まいです。無断での侵入は厳禁ですのでお気を付けください。そして北区画。オロチ様はまずはこちらをお訪ねください。通称、探究者区。【冒険者ギルド】【騎士ギルド】【魔術師ギルド】などが並んでいて、探究者の聖地と呼ばれて思い浮かぶイメージはこちらでしょう」
「北区画だな……了解した」
「像を迂回して対面の通路を真っすぐ行かれますと北区画に出ます。ヘリオスは四つの区画で構成されていますが、一区画が都市並みの規模を誇っていますので、移動にお困りでしたら
「ああ。何から何まで助かった」
「いえ! お力になれたならよかったです!——それでは、あなた様の成功をお祈りしております!」
腰を曲げ深々と見送られる。
オレはもう一度ステラの像を見上げると、北区画に向かって足を進めた。
「いらっしゃいニャ! どこまで行くニャ?」
ネコが、二足歩行で、声を発した。
長い時間を掛け通路を渡り北区画に出たオレを待っていたのは、帽子と黒い制服に身を包んだネコが御者台に乗った大きな馬車だった。
「……何者だ?」
「んニャ? 運転手ニャけど……」
「ネコが運転手なのか。すごいな」
「
「ほう、
「おお、お上りさんニャね。この都市の
「……冒険者ギルドまで頼む。それと、少し撫でてもいいか?」
「しょ、初回サービスニャよ! 邪魔しなければいいニャ!」
「ありがとう」
広い御者台に乗せてもらうと、ゆっくりと馬車が動き出した。徐々に速度を上げる馬車は流れる景色をどんどんと置いていく。
しかし、いくら進もうとも人の数は変わらず、この広い区画を埋め尽くすほどたくさんの人間が存在しているのが分かる。
その大半の人間が武装しているところを見ると、この北区画の特色なのだろう。熱気と活気にあふれている。
帝城アルファルムの向こうからこの都市に入ってきたのが懐かしく思えるほどの景色の変わりように、まったく違う都市に入ったかのような錯覚に陥る。
「お客さん。ヘリオスは初めてニャね」
「ああ」
「ならガイドして、や~……そこきもちぃにゃ~……」
「良い手触りだ」
「あっ、ち、違うニャ! ガイドしてやるニャよ!」
「それは助かる。優しいネコだな」
「これも仕事ニャ! 遠くに見える建物がいくつかあるニャ。北区画で最も大きい三つの建物、黒いのが【冒険者ギルド】。白いのは【騎士ギルド】。紫の三角屋根が【魔術師ギルド】。全部大貴族の館も目じゃない大きさニャね~」
ネコの運転手の言う通り、遠くからでもその存在感は圧倒的で、なにか大切な施設であることが初見でもわかるように造られているのだろうか。
だが、オレの目を引く建物はそれだけではない。
その他に、いくつも見える建物。ギルドほどではないが、それでもかなり巨大な建物が乱立していた。
「ギルドとは別に建っているあの建物はなんだ?」
「ああ、あれニャ。あれは――クランハウスニャ」
「くらん……?」
「ニャ~、ソレも知らんニャ?」
「ご教授願う」
「まず、ギルドってのは同業者組合ニャ。同じ志を持って働く同業者たちの集いニャ。んでクランというのは、同じ目的を持った者たちのギルドよりも小規模の集まりニャ。探究者たちは、まずギルドに所属して資格を得て、そして同じ目的を持った者たちと協力するためにクランに入るニャ」
「なるほど……別のギルドの人間とも協力できるということか。英雄譚で見たパーティーのようなものか?」
「まあざっくり言えば大規模なパーティーみたいなもんニャね」
多少は噛み砕けたような気がする。
ギルドは不特定多数の集まりで、クランはギルドの垣根を超えた協力者たちの集まり。
「では、クランハウスと言うのはそのクランの拠点ということか?」
「半分正解で、半分間違いニャ」
「……と言うと?」
「クランは数えきれないくらいあるけどニャ、あんなでかいクランハウス建てられるのは数えられるだけニャ————【
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