第27話
休日、それほどありがたいものはない。前世知事だった期間は狂ったように働き、まともに休日も取れなかったからこそ俺には休日の重要性がわかる。
転生してからも休みが来たと思いきや波乱の展開続きだし、俺に休日は来ないのかと何回嘆いたことか。しかしこの無念は今日晴れた。
正式に今日は休日になったからだ。
グリュネの件が一件落着してから1週間経っての休日だ。いやあ、この1週間は忙しかった。まずグリュネの夫に医師をつけて、貴族位も返してもらって、フランシスと再会して、そんなことをしていたらあっという間に1週間経ってたよ。
さて、そんな久しぶりの休日をゴロゴロして過ごすのもいいが、今日は一つやりたいことがあるんだな。
というわけで、本日俺は服屋に来ています!しかも護衛なしの一人で。
そう、服。俺は今貧乏服しか持っていないから、もう少しスタイリッシュなやつも欲しいなと思って、思い切って服屋に来てみた。
それにしても派手な服ばっかりだな。ギィズニーのお姫様や王子様を彷彿とさせる華美なドレスばっかりだ。別にドレスでもいいんだけど、正直言って動きにくいんだよな。先日も転んで死にそうになったし。
とりあえず店員さんにでも聞いてみるか。
「すみませーん!」
「はいよ!」
「実は動きやすいけど清楚な服を探していまして……」
「動きやすいですか。ドレス全般の機動力は上昇してますけど、どうでしょうか」
うーん。女性ものの服となるとやっぱりドレスしかないのか。俺はドレス自体が嫌いだからな、できれば他のにしてほしい。
「ドレス以外ではありますか?」
「うーん。ドレス以外ではちょっとないですね。」
やっぱりないか。こうなったら作ってもらえるか聞いてみようか。オーダーメイドってやつですよ。
「じゃあ、服を作ってもらうことは可能ですか?」
「オーダーメイドってことですか?」
「そういうことです。」
「なるほど。デザインとかはありますかね?」
「デザインですね。紙と筆をいただけますかね?」
デザインを書けってことか。絵心がほとんどない俺には少し難しいが頑張って書いてみよう。
高野の姿を想像しながら筆を走らせていく。よし、できた。
書いた絵を店員さんに見せると、どうやら驚いた表情をしている。
「こんな服見たことないですね。」
「作れますか?」
「一回やってみないとわかりませんね。」
「わかりました。じゃあいつ取りに伺えばいいでしょうか?」
「いえ、今魔法で作っちゃいますね」
魔法?異世界だからいつかは出現すると思ってたんだけど、それが今とは。どうやらこの世界には服を作る魔法があるらしい。
「じゃあ、『衣服生成』」
店員さんがそう唱えると、目の前にデザイン通りの衣服が現れる。
「おぉ!」
「一旦着てみてください。」
出来た服を着てみると、背丈にもきちんと合っていてピッタリだ。ちょっと胸が苦しいけども、全然我慢できる。
店員さんが胸を凝視している気がするのだが、きっと気のせいだろう。
「すごいかっこいいです。この珍しい服の名前はなんというんですか!」
「これはスーツと言うんです。」
そう、俺が注文したのは着慣れたスーツだ。高野に似ているエルナの体ならきっと高野同様に似合うだろうと睨んだのだが、全くその通りだったよ。鏡に映る自分の姿がかなり格好いい。
って、自惚れてんじゃない!
「あの、これ買いたいんですけど、どれくらいしますかね?」
「合計で金貨十枚ですね。」
高いな。どこのブランド品だよ。でもまあ、服は一生ものだと言うし、今は余裕があるから買ってもいっか。
「じゃあ買います。」
店員さんに金貨十枚を手渡す。
「はい。金貨十枚をちょうどいただきました。袋に詰めましょうか?」
「いえ、着て帰ることにします。」
「了解しました。ご来店ありがとうございました!」
とりあえず、スーツも買えたし、気分転換もできたし、十分な休日だったな。今日はぐっすり眠れそうだな。
見慣れないスーツのせいか、俺は周りの人に凝視されつつも、上機嫌で帰路についたのだった。
「明日も仕事頑張ろ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます