第24話

 裁判当日、俺たちは法廷にやって来ていた。何事も無く三日間過ごせたんだけど、ろくに新しい策も思いつかず右往左往していただけの数日だった。


 ゼスの証言を除いて策は無し。後はフランシスの働きによるか。


「では、開廷します!!」と裁判官らしき人物が叫ぶと、後ろの傍聴席から大きな歓声が湧く。


 あれ?裁判ってこんなコンサートみたいなノリでやるものだっけ。「死刑だ死刑」という野次まで飛んでくる裁判ってどうなの。


 まあこれが異世界の常識なんだろうから、俺が言えることはないな。ともかく、今集中すべきは目の前の敵、グリュネだ。グリュネはフランシスを傍に置き、余裕の表情でこちらを凝視している。


 一方で自陣のアレクサンダーや李も対抗するようにフランシスにガンを飛ばす。開廷して早々かなりバチバチだ。


 それはもちろん俺もだ。グリュネに最も怒ってるのは俺だ。完膚なきまでに叩き潰してやるよ。


「ではまず原告、グリュネ様の主張をどうぞ。」


「はい裁判長。私の目の前にいるエルナは、私への脅迫や恐喝、脱獄、一般人への暴行を幾多に繰り返しています。証人として、フランシスを召喚します!」


「では証人フランシス、発言を許します。」


「はい裁判長。私はエルナと商売仲間として手を組んでいましたが、気に食わない方への暴行、脅迫などは常に気に障りました。特にカーティスさんへの暴行は酷く、吐き気がしました。」


 ってフランシス?今全部バラしたよね?今ものすごく不利になっちゃったんですけど。ギャラリーからは「死ね」とか言われ放題だし、もしかしてフランシスって本当に裏切っている?


「被告エルナ、これは本当ですか?」


「いいえ、私はやっていません。」

「裁判長、発言のお許しを。」


「原告グリュネ、認めます。」


「はい裁判長。エルナは今挙げた数多の罪状に加え、私の友であるゼスを殺してしまったのです!」


 傍聴席から更に強い罵声を受ける。裁判長も明らかに俺のことを犯罪者だと思ってるし、絶体絶命。


「被告エルナ、これについて何か言うことは?」


「裁判長、私が回答させてもらいまス。ゼスの殺人の証明には証拠が不十分でス。証拠の提出を求めまス。」


「原告グリュネ、証拠の提出を。」


「はい裁判長。私が今提出したのは、ルミノスフィアで撮影された当時の写真です。写真には、明らかにエルナがゼスを刺している姿が映っています。」


 裁判長は写真を覗き込むと、納得したように頷き「確かに被告がゼス氏を刺している姿が映し出されていますね」と宣言する。


「裁判長、発言の許可を。」


「了解しよう、被告エルナ。」


「証人の召喚を求めます。」


「誰を召喚するんですか。」


「ゼス氏を証人として召喚します。」


 写真。それがグリュネが言ってた証拠ってやつか。だったらそんなに警戒する必要は無かったみたいだな。さっきまで騒がしかった傍聴席が急に静まり返る。「死者を証人として召喚するやつがいるか」といいたげな表情だ。


「許可します。ゼス氏、前へ。」


 裁判長がそう宣言すると、居る筈がないと思っていただろうゼスが姿を現す。グリュネは生きているゼスに驚きが隠せない様子だ。


「裁判長、私はエルナ一行に殺されてなどいません。エルナ様は、自殺しようとした私を助けようとしていたのです。それをグリュネ様は勘違いされたのかと。」


「ッー!!」


 グリュネの顔が引き攣る。明らかに予想外の展開に動揺を隠せていないな。攻めるならここ。フランシス、頼むぞ!


「裁判長。」


「なんですか、アレクサンダー?」


「証人を召喚したいのですが。」


 アレクサンダー?なぜアレクサンダーが証人を召喚するんだ?そして誰を?一体何をしたいんだ?


「許可します。」


「では、フランシスを証人として召喚します。」


 ついに逆襲のチャンスが俺たちに舞い降りてきた。

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