爵位剥奪編

第3話

(んっ、眩しいな…)

目を細めつつ、重い瞼を少しずつ開けていく。視界が定まらない。

俺は一体どこなんだ?未だに意識が朦朧としている。目を擦って目を覚ます。


(えっと、俺は一体どこに…)

ベッドから自分の体を起こす。ん?何か違和感が。

体が重いような。特に胸の辺りに錘がついている感じがッー!


胸を見下ろすと、何とおっぱいがある。少なくともDカップでかなりデカーじゃなくて!

もしかして俺女体化してる?よく見ると女物のドレスを着てるし。心の中で少し焦り始める。


待て待て、まだ決まったことじゃない。ムスコがまだあれば、ただ胸が大きい男なだけだ。

ベッドから飛び降り、恐る恐る自分の股を揉んでみる。しかし、そこにはもっこりとした感触はなかった。


「嘘だッ!女体化してるだとッ!」

甲高い声で叫んだ。声も紛れもなく女性の物だ。

髪も肩くらいまであるし。もう女だと認めるしかない。


(未使用のまま俺のムスコは…)

心の中で大号泣する。永遠に童貞だとは。

ここで凹んでもしょうがない。二度目の人生をもらえただけでもありがたいんだから。

二人のダメ神達が頭の中に浮かんだ。あの二人を思い出すとなんか嫌な気分だな。


(そういえば!無双スキルかなんかについて言ってたよな。)

神様は確か「恋愛相関図」って言う無双スキルを授けてくれるって話だったけど。スキルってどうやって発動させるんだ?スキルの使い方が分からないのは致命的な問題だ。とりあえず、念じてみるか。


(「恋愛相関図ッ!」)

そうやって心の中で念じてみると、ホログラムが俺の目の前に現れた。

ウオッ!超ハイテクじゃないか。宙に浮くテレビスクリーンなんて初めて見た。

そう興奮しながらも、スクリーンに目を移す。どれどれ?


(恋愛相関図アプリ?)

宙に浮く唯一のアプリアイコンを押してみる。何とタッチスクリーンになっていて俺の指に反応する。神の技術に感嘆してる間にアプリが起動する。起動すると、3つのボタンがスクリーンに表示された。


(恋愛相関図、人物紹介と、ヘルプか。)

やはりまずはヘルプから閲覧してみるとしよう。ヘルプのボタンを押してみる。

そしたら、スクリーンが暗転し、長文がスクリーンに表示された。

なになに?常和君、元気にしてるかいーって神様達直筆の手紙じゃないか。いつも通りふざけてるんだろうなと思いきや、中々真面目な内容が書かれてる。


まずは人物紹介からの説明。自分を含めた人物の生い立ちなどについての情報などを調べられるという。これで自分自身の正体とかも調べられるな。で、恋愛相関図。触れた人物の恋愛事情を把握できるという能力。使い所が難しい何とも微妙なスキルだな。


下の方にスクロールしていくと、ありがたいことに用語説明欄があった。未だにスキルとか、乙女ゲーとかの意味が曖昧だから大変ありがたい。早速調べてみよう。


『乙女ゲー:乙女ゲームとは、女性向け恋愛ゲームのうち、主人公が女性のゲームの総称である。』と書かれている。

なるほど。乙女ゲーの目的は男共を口説き落とすことなのか。ならば恋愛相関図は確かに最強だな。もう答案がすぐそこにあるような物だもんな。


しかし乙女ゲーに転生しても俺は嬉しくないんだよな。男が男を口説き落として何が面白いんだか。俺には残念ながらそんな趣味はないので、恋愛相関図は依然微妙なままだ。


という訳で次の用語へ。次の用語はースキルか。

『スキル:各キャラクターが使用できる特殊能力の総称である。』

かなり単純だな。特殊能力ということか。職場でのスキルの意味は、「訓練や学習によって獲得した技能の総称のこと」だからな。そりゃあ話が食い違うわ。


他の用語解説も見ていったけど、特に気になる用語は無かったな。とりあえずヘルプはこれくらいにしといて、機能「人物紹介」を使ってみようじゃないか!


ホームスクリーンへと戻り、人物紹介というボタンを押してみる。

スクリーンが再び暗転し、ブラウザのサーチバーのような物が表示される。ここに調べたい人物を打ち込むっぽいな。じゃあ早速タッチキーボードで「自分」と入力してみる。個人名じゃないとダメのような気がしなくもないが、やってみて損はないだろう。


エンターキーを勢いよくタップすると、転生前の俺の写真と、転生した俺の写真が表示される。えっと、『転生前:常和藍、転生後エルナ・フランシス』すごいな。転生前後の俺についての情報がびっしりと書かれてる。


どうやら、転生後の俺の名前はエルナ・フランシスというらしい。18歳で底辺令嬢。3サイズはーってそんなことまで書いてあるのか!外見は黒髪のセミロングで、かなり整った顔立ちをしている。はっきり言って超がつくほどの美人である。流石乙女ゲーって感じだ。


更に下へスクロールしていくと、生い立ちとかについての詳細が表示された。

出身はエンペ村で、父も底辺貴族。母は平民らしい。エンペ村がどこか分からないから正直いってなんとも言えない。性格は温厚で正義感が強い。品行方正で、頭が切れる人らしい。

まさに高野って感じの女性って感じだな。ていうか顔立ちもよく見れば高野に似てるしな。


そんなことを思いながら一番最後までスクロールしていくとー

(ん?関連記事?)


『エルナ・フランシス関連人物』という欄があった。その欄にはエルナに深く関係する人物が四人並べられていた。彼女の体に転生した俺、エルナの父母の記事は当たり前だがー

「アレクサンダー・ベイン?」思わず声に出てしまった。


エルナの紹介に一度も出てきてない名前。思わず気になりクリックしてみると、青い瞳をした、金髪のイケメンの顔写真が表示された。ー誰?本文へとスクロールする。一体コイツは誰なんだ?


『アレクサンダー・ベインはエルナの頼れる執事兼秘書。』

そう書かれた文を読んだと同時に、部屋のドアが勢い良く開く。


「失礼します。お飲み物をお持ちしました。」

そう言って部屋に入って来たのは、スーツが似合う、青い瞳をした金髪のイケメンー


(こいつじゃん。アレクサンダー・ベイン。)


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