第二話 魔法と魔術
教室では担任の先生が授業をしている。だが、マヒロ・アカタニはどこか上の空だった。
この学院では、一限目に模擬戦闘をするのが習慣となっている。彼は学年3位の実力を持つ、優秀な学生だ。ちなみに1位はジャディ・ファウスト、2位にカナタ・アオイ、4位がルナ・ドリアード、5位がトーマ・シルヴィで一年生の生徒間でマジッククインテットなんて呼ばれてる。
我が国ヨハネスの皇族では、「国は民によって成り、皇は民の象徴であれ。民は勉学に励み良き国を作る存在と成れ。」という代々受け継がれてきた教えがある。我がヨハネス魔法専門学院ではその教えを尊重し、基本的な教養から実生活での役立つ知識、魔法の基礎から応用までを幅広く学ぶ。そこから発展した専門分野に関しては専攻科にて学ぶことになる。
学園での学びが重要なことは学生全員が理解していることだか、それでも集中できない原因があった。
(どうやったらアイツに勝てんだか…)
彼は中等部の頃までは学年トップを取り合うレベルで調子が良かったのだ。それが高等部に上がってからというもの、なかなか上手くいかずその上カナタが急激に成長したのも相まって一勝も出来ていないのだ。
もちろん、実戦形式が基本なので1v1以外にもチーム戦もあるがどうしてもカナタに勝つことが出来ずにいた。無論真っ向勝負だけでなく、時には騙し討ちの様な形に追い込んだり虚を衝く様な攻撃をしても、最終的に負けてしまうのだ。
(アイツに一泡吹かせるために俺に足りないのはなんなんだ…)
無数に思考を回す中、不意に脳天に激痛が走った。
「ィイ゛!?ッッテ゛ェェェ」
不意に襲った激痛の正体は、教壇で指導している人物の氷柱によるものだった。
「私の講義中に考え事だなんて…随分と余裕そうですね」
「マフユ先生…」
彼女はマヒロの所属する一年A科の担任マフユ・アサギリ。一見すると冷徹な女王といった印象を受けるが、それに反してやわらかい性格と言うのに加えて実力も相当なものであるため教員生徒問わず人気の人物だ。
「いや、別に余所事をしてた訳では…」
「そう、ならこの問題について答えと解説をしなさい。」
マフユはスクリーンに映された問題を指さしてそう言った。その問題はレベルこそ高くはないが、何も聞いていない状態でいきなり解けるような易しい問題でもなかった。
「無理です。」
「やはり、聞いてなかったようね」
彼女は何かを察したような呆れ口調でそう言った。というのも彼女が担任になったのは中等部の頃からでそれからずっと担任が同じなのもあり俺がカナタに強いライバル心を抱いていることを知っていたからだろう。
今の俺は、カナタとの位置関係が昔と今で違うことに対する劣等感を抱きそのことだけに思考を奪われるほど固執しているのだ 。
「敗北の理由《ワケ》を探し、振り返り、次に繋げようとするのは悪くない。でも、今はそのときでないことは貴方も理解してるでしょ。」
「…はい。申し訳ありません。」
「分かればいいのよ。とはいえこのままお咎めなしってわけにも行かないからね。今日における魔法と呼ばれるものについて詳しく説明して頂戴 。もっともアナタまらこのくらい造作もないでしょうけど。」
「わかりました。今日における魔法と呼ばれるものは物理型と精神型の2種についてそれぞれ炎氷雷木の4属性と光闇の二属性の計6属性に分類されます。古来より人々の生活に使われてきたものでしたが、650年前起きた技術革命の際、新たな動力が発明されたことにより生活では置き換えられていますが、その性質により、戦場や式典には今も用いられています。
また、魔法と呼ばれるものも発動方法や目的三種類に分類され、1つ目が魔法、2つ目が魔術、3つ目が霊術となっています。
魔法は大気中の魔素のみを使用し、素質さえあれば比較的簡単に使えるものとなります。
魔術は大気中の魔素に加え体内で魔術溶媒となる魔晶を融合させて発動します。こちらも素質さえあれば発動はできますが体内で魔晶を精製する都合上ある程度の経験を積んだ者か天性の感覚の持ち主でないと身体への負担がでかく効率も悪いとされています。
最後に霊術ですがこれは前述した二つとは異なり、体内の霊力をエネルギーとし発動されます。また魔法や魔術に比べ封印や使役などに重きを置かれています。
また、いずれの魔法も魔法によって起こる現象へのイメージが必要である。現代ではそれを魔法式と呼ばれる術の情報を記録するものに変換しエネルギー暴走における危険性や魔法発動の効率を高めるためにもこれらを発動時に"詠唱"または魔法式を保存した魔道具を使用します。魔法や魔術は武器そのものに魔法式を保存する拡張機器を付けますが、霊術に関しては古来より伝わる"御札"が使われます。
合わせて、霊術には特定の人物だけが使用可能な神降ろしと呼ばれるものがあり、使用可能な人物のうちの一人がアンデラートさんです。」
彼がリーナの名を呼ぶと、彼女が応じるように立ち上がる。それを確認して続ける。
「実際に神降ろしと呼ばれていますが、厳密には神懸かりに近く、神様のもつ神力をその身に借り受けるものです。その際身体が神聖なる光に包まれ光翼を纏います。」
マヒロの後ろのほうで歓声が上がったのは、彼女が神降ろしをしたからだ。
「使用すると身体機能の強化、および神力による強化が行われ、補助具なしでの魔法の使用及び、光翼による飛行などが可能になります。」
ここまで言い切ったタイミングでちょうど授業終了のチャイムがなった。
「よろしい。完璧な説明ね。さすが学年トップ3なだけあるわ。ただ、もう少し周りを見る力が増えればよりいいのだけど。」
(そうは言われても勝てないんじゃあ…)
「だからそうやって考えすぎるのをやめなさいよ、そんなんじゃあなた孤独になるわよ。」
そう言われるとマヒロが友達と言えるのは片手で数えられる程しかいないのは事実だ。と言ってもそれだけが原因ではないが。
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