魔法専門学院の魔術使い
piko
第一話 法専と幼馴染
※
魔法、化学では説明できない現象をいとも簡単に引き起こす力。そんな力が当たり前の世界で生きる少年の物語である。
※
一瞬避ける判断を誤った。次の瞬間、俺は急所を撃ち抜かれていた。意識が遠のくなか、かすかに声が聞こえた。
「勝負あり。勝者 カナタ・アオイ」
相手の勝利を宣言する声と、クラスメイトの歓声。何度も耳にしたその声を聴きながら、俺の意識は暗闇へと落ちていった。
目を覚ました時、俺は演習場の端に寝かされていた。
サイズ感でいうと首都圏の競技用ドームに近しいグラウンドがあり、それを囲むように観客席が並んでいる。俺が通うヨハネス国立第Ⅱ魔法専門学院[通称
そして、俺ことマヒロ・アカタニはその学校に通う一年生だ。
「試合時間12分26秒、カナタ相手なら大健闘だろ」
俺にそう話す人物の名はトーマ・シルヴィ。初等部の頃からの友人だ。このヨハネス国の皇族の分家の出で、優秀な人物だ。
余談だがこの国の皇族はファウスト家を本家とし分家にシルヴィ家、ドリアード家などをもつ世界5大名家に数えられるうちの一つだ。国内での絶対的権限があるわけではないが、議会と対等以上に力があり決定に対する拒否権を持つ。
「何回やっても死ぬのはいいもんじゃねぇな」
「同感だよ。俺もなれそうにない。……殺す感覚もな」
会話の内容がとてつもなく物騒だが、俺たちが戦ったところには、事象改変代替領域"PAAA(phenomenon alteration alternative area)"という領域内でおこったすべての事象が特定のコマンドによってすべてが領域に入る前の状態に上書きされ元どおりになる、そんな魔法が発動している。手加減なしの殺し合いの戦闘をしてもケガや後遺症の心配をしなくていい、便利な魔法だ。
といっても傷を負えばそれ相応のダメージを喰らうし、死ぬ様な攻撃を受ければ、一時的に死亡する。それでも実戦同等のものができるのは大きなメリットだ。
「相手が悪かったって感じだな。カナタ・アオイは学年次席、実践においてはトップだろうといわれてるんだぜ、おまけにお前と相性の悪い搦め手タイプ。しかたないだろ。」
「んなこたぁわかってるよ……でも俺はあいつの……」
「彼の幼馴染でありライバル、だろ……だから勝ちたい…ってのはわかるが。そればっかり意識してちゃあ…まぁわからなくもねぇが…失言だったか、すまん。」
「...気にすんなよ……」
俺はカナタに視線を向ける。容姿は佳容な感じでさっぱりとした好青年といった感じ、背丈はそこまで高くも低くもないが体つきは、思ったよりがっちりとしていて、頼れる男といった感じだ。
性格も穏やかで誰からでも好かれるタイプということも相まってクラスでの人気者だ。それも相まって一部の生徒によるファンクラブがあるとかないとか。
昔は近かった距離が、年を追うごとに遠くなっていく。一瞬彼と目があったが俺は目をそらした。だが、彼の眼からはどこか淋しさを感じた。
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