第六章 聖戦
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二〇二七年 八月一四日
駐日ソ連地上軍の参戦は戦局を逆転させた。
甲府陸軍基地に拠点を置くソ連第42機動軍は、南部町― 秦野市間の七十キロに渡る区間を攻勢正面として東海道へ侵攻を開始。膨大なロケット砲火力と機動歩兵戦力により、十日間の戦闘で疲弊しきった帝国陸軍第三軍を瞬く間に蹂躙した。第三軍は伸び切った兵站線の側背を突かれることになり、ソ連軍と太平洋に挟まれて退却もままならず文字通り消滅した。
同時に新潟のソ連第98連合軍も柏崎―― 南魚沼間で攻勢を発起。帝国側は同地域に展開する第一軍が遅滞戦闘に努めつつ、伊勢崎まで進出していた第二軍の撤退を即座に開始した。縦深に比較的余裕のあったこちらの方面では、帝国軍は東海道のような惨状に陥らなかったものの、北方軍管区部隊を投入した人民陸軍による追撃で多大な損害を出した。
こうして、一四日のうちに戦線は軍事境界線まで一気に後退。帝国は大損害を出した上に十日間の戦果を僅か一日で全て失うことになった。
だが東側の反撃はそこでは止まらなかった。
ソ連地上軍は座間の第31戦車軍、宇都宮の第28戦車軍を加え、日本人民陸軍と共に帝国領へと侵攻。米国政府の激烈な非難を無視し、十六年前を再現するかのように帝都へ向けて進軍を開始したのだ。
死者、行方不明者数の総数、帝国側二九四六〇名に対し人民共和国側三三二〇〇名。
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