第五章 停戦破棄
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二〇二七年 八月三日 午後〇時〇分
日本帝国 外務省 人民共和国に対する通牒覚書
先の大戦を契機に列島が二つの政体の下で分割統治に置かれてより八十年、帝国政府は人民共和国の自由民主主義理念に反する圧政と独裁を糾弾しつつも、日本民族同士の殺戮という一大悲劇を回避すべく、常に平和尊重の意志を表明して来た。然れども人民共和国は帝国の寛容を無下にし、侵略意図という流言飛語を国際社会に対し喧伝し続けたばかりか、寸毫の正当性もなき武力行使でもって応答とした。
(中略)
再停戦後、平和条約締結に向けた帝国の譲歩は再三に渡って踏み躙られ(中略)人民共和国は軍事的挑発を繰り返している。
(中略)
帝国政府は平和と人道に対する一縷の望みを賭け、此処に最終的な要求を左の如く通告する。
一、軍事境界線の東方三〇キロまでの地域に現在展開する日本人民軍の即時撤退。
二、日本人民軍の侵略行為により生じたる帝国市民及び財産への損害賠償の確約。
三、日本人民軍の戦争犯罪の究明及び軍事法廷における裁判と刑の執行への協力。
四、先の侵略以来拉致拘禁されたる捕虜の即時解放及び戦死者の遺体の即時返還。
五、帝国政府が主張する歴史的経緯に鑑みて真に公正なる軍事境界線案への同意。
六、前項に基づき再確定されたる軍事境界線東方地域(南方軍管区)の非武装化。
各項の詳細は左の如し。
(中略)
四八時間以内に充分な回答が得られない場合、最早人民共和国に平和共存の意志なきものと判断し、帝国は自衛権を行使する。
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