第7話 揚げ物パーティーしてたら畑泥棒が現れた!

 家庭菜園を始めてから三日目。

 植えた植物たちはすくすくと育っていた。

 この成長具合だと、明日には実がついて明後日には収穫できることだろう。


「なぎさ~、今日のお昼ご飯はなんですか~?」


「ふっふっふ、今日はパーティーを開催する!」


「パーティー?」


「きゅう?」


 俺は胸を張って告げる。

 二人は首を傾げた。


「たまにはカロリーなんて気にせずドカ食いしてぇだろ!? 揚げ物をよぉ!」


「た、食べたい……! けど、なぎさのご飯がおいしくないわけがない……! 食べ過ぎて太っちゃう未来しか見えません!」


「きゅい……!」


「この中に日和ってる奴いる!? いねぇよなぁ!? 揚げ物食いまくるぞ!」


「く……! 日和ってなんていませんよ、ええ! 食べまくってやりますとも!」


「こん!」


 躊躇していた二人を煽ったら、驚くほどあっさりと乗ってしまった。

 それだけ俺のメシが期待されてるってことかぁ~!

 これは本気を出すしかねぇな!


「ここにイノシシ肉とあらかじめ下味をつけて一晩置いといた蛇肉があります」


 蛇肉は醤油タレとおろしにんにくタレの二通り用意してある。

 イノシシのロース肉はシンプルに塩こしょうのみだ。


「この肉たちで蛇のから揚げとトンカツを作るぜ!」


 蛇肉は外はカリカリ中はジューシーになるようにきっちり二度揚げする。

 最初は低温で揚げて、休ませた後に高温で揚げるのが二度揚げのコツだ。

 トンカツは高温の油でキツネ色になるまで揚げる。


「よだれが垂れてますよ、コンちゃん!」


「きゅう……!」


「でも気持ちは分かります! あと少し……あと少しの辛抱ですよ! 頑張って耐え忍ぶのです……!」


「二人して極限サバイバルでもやってんの?」


 それくらい大げさなリアクションだった。


 ぐうう~~~と、二人の腹が同時に鳴る。

 揚げ物の音って食欲を刺激するよな。

 実は俺もすでに十回くらい腹鳴ってるぜ、揚げ物の音でかき消されて聞こえないだけで。


「おまちどうさまでございんす」


「急にキャラ崩壊しないで?」


 キャベツの千切りを盛った皿に蛇肉のから揚げとトンカツを乗せる。

 朝メシの残りのみそ汁と炊き立てホカホカの白米をテーブルに運ぶ。

 飲み物はぶどうジュースをチョイス。


「パーティーの名目はどうします?」


「コンちゃんとシロナの歓迎会とかでいいんじゃね?」


「じゃあそれで。なぎさ、音頭をお願いします」


 俺はグラスを持ち上げる。


「そんじゃ、仲間が増えたことを記念してかんぱーい!」


「かんぱーい!」


「きゅ~!」


 グラスをわすなり、二人はバクバクと揚げ物を食べ始めた。

 俺も蛇肉のから揚げを一口ぱくり。


 衣のサクッと感、次いで中からあふれ出すジューシーな肉汁。

 香ばしい匂いが口の中いっぱいに広がり、濃厚なうま味がダイレクトに伝わってきた。


「なにこれ~!? 今まで食べた揚げ物の中で一番おいしいんですけど!」


「こんこん!」


「サクサクジューシーさがたまらないですぅ~」


「きゅん~」


「気に入ってもらえてよかったぜ。作った甲斐があるなぁ」


 蛇肉は基本さっぱりしていて鶏肉に近いのだが、化け物マムシの肉はうま味が詰まっている。

 かなりがっつり系って感じだ。

 醤油もそうだが、おろしにんにくの濃厚な風味との相性が最高だな!

 これでから揚げ丼なんか作った日には、余裕で百杯は食えてしまいそうだ。


「トンカツもおいしいです。ね~、コンちゃん」


「こーん」


 イノシシ肉に濃縮されたうま味をサクサク感と一緒に楽しめるのたまんねぇな。

 今度イノシシ肉でかつ丼も作ってみるか!

 こっちも余裕で百杯は食えそうだ。


「ふぁ~、大満足です。もう食べられない」


「きゅい~」


 二人は何度かおかわりしたところで食べるのをやめた。

 満足気にお腹をさする横で、俺はもう三回ほどおかわりしたぜ。


「そんなに食べて太らないんですか?」


「へーきへーき! 俺って自分が思ってるより運動量多いみたいだから、食べ過ぎを気にする必要ないんだよね。寝てる時以外ずっと動いてるぜ!」


「落ち着きがないとかいうレベルじゃなかった」


「まあ俺マグロ人間だから(?)」


「海へ帰れ」


「それは全然アリ」


 そのうち海行きてぇな。

 海鮮ハンターやりてぇ~。

 刺身食いてぇ~!


「なぁ、二人とも暇してる?」


「してますよ~。今日の掃除はもう終わりましたし」


「こーん」


「じゃあさ、みんなで川遊びしようぜ!」


 海に行きたいという衝動を川で紛らそう。


「たまには童心に帰ってはしゃぎまくるのも悪くないかもですね」


「きゅー」


「よっしゃ行くか! 出発進行~ナスのお進行~」


 ハイテンションでドアを開けた時だった。


「……え?」


「ウキ!?」


「キィアー!?」


「ウホ!?」


 俺の畑に泥棒が入っていた。

 サルとゴリラとチンパンジーの魔物だった。


「役満だああああああああ!!!?」


「何が!? 三匹ともAランク上位の魔物ですよ! 私より強いです!」


 俺はサルゴリラチンパンジーを見れた感動を押さえながら、一歩前に出る。


「なんだお前らは?」


 サルが対抗してずいっと前に出てきた。

 お前がボス格か。


「ウッキーウキッキ」


「ほう、黒猿山兄弟くろましらやまきょうだいというのか。俺は星宮なぎさだ」


「ナチュラルにサルと会話するな」


「俺の畑に手を出すとは大した度胸だな。その心意気は認めてやろう」


「ウキキウッキー」


「ふーん、やるじゃねぇか」


「だから何が!?」


 このサル、強い……!

 群れのボスとしての……長男としての矜持を持っている……!




「お前ら、俺の船に乗らないか?」


「は?」



 俺はサルゴリラチンパンジーを勧誘することにした。



「サルよ、群れのボスを賭けた勝負をしようぜ!」


「この船長降ろそうかな」


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