第6話 この世界だと俺は規格外らしい
「グッドモーニングスローライフ!」
「きゅ~」
「おはようございます。朝からテンション高いですね」
シロナがあくびをしながらリビングにやって来る。
今日の朝メシはオムライスにするか。
材料を【創造】する。
「え!? その食材はどこから!?」
シロナがめっちゃ驚いた。
【創造】の存在を知らないようだったので効果を教えると、これまためっちゃ驚いた。
「強すぎでしょ、そのスキル! 控えめに言って壊れスキルですよ、壊れスキル!」
「控えめに言わなかったら?」
「この世界の在り方を根本から変えかねない危険なスキルです!」
「言いふらしまくってたら俺が原因で戦争になっちゃったり……?」
「堂々と公言して見せびらかしてたら国が放っておかないでしょうね」
「マジか。じゃあこれ俺たちだけの秘密な!」
やめて俺のために争わないで展開はめんどいから秘密にしておこう。
……こういうこと言ってる創作主人公はたいてい隠せず事件に巻き込まれてるけど、俺はそこんとこ本当にしっかりしてるから安心してな!
守秘義務はちゃんと守秘するから!
「あいよー、オムライスできたぜ」
滑らかなふわとろオムライスを完成させた俺は、ケチャップでデフォルメしたコンちゃんの絵を書いてみた。
「わ~、上手ですね! 可愛い~!」
「きゅん!」
俺って基本的にガサツだが、丁寧にやろうと思えばめっちゃ丁寧にできるタイプだからな~ハハハ、アハハハハ、アーッハッハッハッハッハ!!!
「大天狗なみに鼻伸びてんぞ」
丁寧に作ったオムライスは大好評だった。
二人とも食べるのに夢中になっていたぞ。
「チャーシューの時も思いましたけど、なぎさ料理上手ですよね。掃除をするだけでおいしいご飯が食べ放題だなんて、レイスになれてよかったです!」
めっちゃ褒めてくれるじゃん!
承認欲求が満たされるの気持ち~!
「ところで、シロナはどうしてレイスになったんだ?」
「ここは私に任せて先に行け! とカッコよく言ったはいいものの普通に負けて死にました、はい」
「ああ、うん……」
「さすがに二十三歳で人生終わるのは嫌だったのでレイスになりましたけどね」
転職したみたいなノリで言うな。
「別に死んだことに対するつらさとかはないので気を遣わなくて結構ですよ~。それより、なぎさはなんでこんなとこで生活してるんですか? まさか勇者になるための修行だったり……?」
「いや、スローライフしてるだけだが?」
「え?」
マジで気ままにスローライフしてるだけなんだが、そう伝えるとありえんほどビックリされた。
「ここ魔境ですよ!? この辺は魔境の中でも比較的弱い魔物しかいないとはいえ、それでも私より強いやつばっかですよ!? スローライフするならもっと安全な場所があると思うのですが……!」
コンちゃんが「めっちゃわかる~」ってシロナに頭すりすりした。
魔境最弱の身として共感できるところが多かったのだろう。
「やっぱここ危険な場所なんだ。へ~」
「軽っ!? っていうか、魔境のこと何も知らずに住んでたんですか!?」
「だって俺、異世界から来たし」
出自を説明したらやっぱりシロナは驚いた。
が、この家の存在などもありすぐに納得してくれた。
意外とすんなり信じてもらえたな。
「そういうわけで魔境について何も知らないんだが、具体的にどれくらい危険なんだ?」
「奥に行ったらSランク以上の化け物みたいな魔物がうようよしてますよ。人類未踏破の最難関ダンジョンも魔境にありますし、魔境のどこかには伝説の神獣もいるって噂です」
「ほえ~、伝説の神獣って?」
「
「まあ大丈夫だろ。Sランクのデスファングボアとマキョウオオマムシ瞬殺できたし」
「はい!? デスファングボアとマキョウオオマムシを瞬殺!? どっちもだいぶヤバい部類のやつですよ!」
「そんなわけだから俺はスローライフを続けるぜ!」
今日やることはすでに決めてある。
スローライフと言えばやはり農業! 野菜作り!
俺は家庭菜園を始めるぜ!
「自分で育てるのも別のよさがあるからな~」
畑は縦横十メートルくらいの広さにするか。
俺は【創造】で農具を作ると、爆速で耕し終えた。
「ふぅ~、充分細かくできたな」
「耕す速度速すぎて地面が爆発してたんだけど!? なぎさのフィジカルどうなっとる!?」
「毎日筋トレしてるからな」
「そういうレベルじゃないだろ!」
俺は【創造】で土を生み出す。
おいしい野菜を作るのが一番の目的だからな。
化学肥料も農薬も使用基準内で使いまくるぜ!
人類の
「とりあえずトマトとピーマンとなすびと大葉とほうれん草とオクラ植えてっと。……じゃがいもも欲しいな。追加で芋畑作るか!」
野菜畑と同じように芋畑も作り、【創造】で作った種を植える。
「水やりは任せてください」
シロナが腕を掲げる。
畑の上空に水の膜ができ、そこから雨が降り注いだ。
「うおおおおお!!! 魔法か!? スゲー!」
「初級水魔法のレイニーです。便利でしょう?」
シロナはまんざらでもなさそうに答える。
これが魔法か~。
シロナに頼んで今度いろんなの見せてもらお!
「きゅう~」
コンちゃんが「ボクも活躍できるよ~」と躍り出た。
ちなみにコンちゃんはボクっ娘だぞ。
ギャップがあってすごく可愛いのだ!
「こーん!」
コンちゃんが一鳴きすると畑が不思議な光に包まれた。
コンちゃんの種族であるカーバンクルは、本体は全く強くないが超強力なバフをいくつも扱える。
今発動したのはそのうちの一つだろう。
「なぎさ、見てください! もう芽が生えてますよ!」
「ホントだ!? ヤベー!」
「きゅ~」
コンちゃんはドヤ顔で胸を張る。
俺が撫でまわすと満足げに鼻を鳴らした。
「すごいですね、コンちゃん!」
「だろ~! コンちゃんはスゲーんだぜ!」
「きゅうきゅう~」
コンちゃんによると今のバフは毎日使えるそうなので、なんと数日で野菜を収穫できるようになった!
コンちゃん様様だな!
「……ぐるぅぅぅ」
「あ?」
森のほうから低い唸り声が聞こえてきた。
振り返ると、体長五メートルを超える巨大な熊がよだれを垂らしながら俺たちを見ていた。
「ぎゃー!?」
「きゅー!?」
────────
種族:マーダーグリズリー
ランク:S
称号:殺戮熊
────────
暴れられたら面倒だな。
せっかく作った畑を荒らされた日には、俺ァ破壊神になっちまうぜ。
「退いてくれなさそうだからとりあえず倒しとくか。デスベアーブロー!」
「ギャオオオォォオオオオオオオオオオオ!!!?」
仕留めたぜ!
ピースピース!
「……あのー、そいつ人間時代の私をぶっ殺したヤバい魔物なんですけど……」
「きゅー……」
「俺何かやっちゃいました?」
「やりすぎですよ。なぎさのフィジカルはやっぱりおかしい」
「俺のフィジカルがおかしいって強すぎって意味だよな?」
「魔境でスローライフ出来るわけですよ。規格外です、なぎさの強さは」
「こん!」
分かってはいたが、やはりこの世界基準だと俺は規格外らしい。
「この調子で一緒に楽しもうぜ、スローライフをよ!」
「……なぎさといると退屈しなさそうですね。のんびり付き合ってあげますよ。どうせ他にやることないですし」
「きゅ~きゅ~」
俺はシロナと仲良くなることができた。
やったぜ! 異世界で初めての友達だ!
ちなみにマーダーグリズリーは食用不可だった、マズすぎて。
俺この熊嫌い!
二度と現れんなよこの野郎!
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