第8話 今日から俺がボスな! オラ! 焼きそばパン作ってやるよ!
「サルよ、群れのボスを賭けた勝負をしようぜ!」
「この船長降ろそうかな」
俺は宣戦布告する。
ゴリラとチンパンジーが心配そうにサルを見るが、サルは臆することなく乗ってきた。
「ウキー」
「そうか」
「なんて言ってるんです?」
「拙者には群れのボスとしてのプライドが、意地がある。貴殿の申し入れが本気なのであれば、拙者は断るわけにはいかぬ。ボスとしての責務を果たさねばならぬのだ! って言ってるぞ」
「サルとは思えない志の高さ」
「もちろん俺は本気だぜ?」
「ウキキ」
ならば受けて進ぜよう。
サルはそう告げてきた。
「これは漢と漢の魂をかけた熱い勝負だ。邪魔するなよ、シロナ」
「する気も起きないのですが」
純粋な力で勝負すれば、どうやっても俺が勝ってしまう。
そもそも勝負にすらならない。
フェアではない。
「ので、じゃんけんBO5を申し込む」
「もっと他にあるだろ。よりによってじゃんけんて」
「ウキ!」
サルはいいだろうと頷いた。
それじゃ行くぞ。
「最初はパー!」
「ウッキーチョキッキ」
「ぬおおおおおおおお!? 負けたァー!?」
「姑息な手を使ったくせに負けるな。熱い戦いはどこいった」
「今のは姑息じゃねぇ! ここまですべて含めてじゃんけんなんだ……!」
「ウキ!」
サルも俺に同意する。
「なんか私が悪い雰囲気になったので謝っておきます。すみませんでした」
……このサル、
俺の搦め手にも対応してきやがった!
とんでもなく頭のキレる奴だ……!
「二本目いくぞ。最初はグー、じゃんけん……」
一本集中!
サルの動きをよく見るんだ!
視線、表情、声音、腕の動き、筋肉の動き……そこから次の一手を読むんだ!
「グー!」
「チョキッキ!」
「一本奪取……! さあ次だ! 最初はパー!」
「ウッキピャー」
「じゃんけん……」
やはり搦め手は通じないか……!
考えろ、なぎさ!
サルの性格、これまでの選択から次の一手を導き出せ!
「パー!」
「ウー!」
「リーチきたぜぇ!」
あと一回勝てば俺が群れのボスだ!
その想いが俺を焦らせる。
だからだろうか?
次のじゃんけんでは、三回あいこが続いたのちに俺が負けてしまった。
「状況は二対二……! お互いにもう後がねぇ……!」
「ウキッキ……!」
最後のじゃんけんを始めるが、またしてもあいこが続く。
ここで負けたら終わり。
なのに勝負を決められない。
その焦りが、プレッシャーが俺にのしかかる。
「チョキ!」
「チョキッキ!」
その時だった。
「きゅい~~~!!!」
コンちゃんが叫ぶ。
「負けないで~~~!!!」と伝えてきた。
……そうだ。
俺には大事な仲間がいるんだ。
こんなところで、負けるわけにはいかねぇんだよぉぉぉおおおお!!!
「あいこでパー!」
「ウー!」
「うおっしゃあああああああああああああああああああああ!!!」
「きゅう~!」
嬉しそうに抱き着いてきたコンちゃんを受け止める。
「やったぜ、コンちゃん! お前のおかげで勝てたよ、ありがとな!」
「あ、勝ったんですね。おめでとうございます」
「え!? シロナ見てなかったの!? 窮地に追い込まれた主人公が仲間の一言で覚醒して逆転勝利する熱い展開したんだけど……」
「内容がサルとじゃんけん勝負じゃ台無しだよ」
とにかく俺が勝った!
「ウキー」
負けたからには潔くボスの座から降りよう。これから拙者たちをよろしく頼む、姉御。
サルはそう告げてきた。
「今日から俺がボスな! オラ! 焼きそばパン作ってやるよ!」
「ただのいいやつじゃないですか」
俺は【創造】した焼きそばパンを手渡す。
焼きそばパンうまいよな!
購買とかですぐ売り切れるだけあるぜ!
「仲間になったことだし、お前らにも名前つけとくか」
名前をつけてもらえると聞いて、トリオ兄弟が喜びの声を上げた。
そうかそうか、嬉しいか。
いい感じの名前を考えてやるからな!
期待しててくれ!
「……ピコーン! ゴリラ、お前こん中で一番体デカいから『巨漢大王』ってのはどうだ?」
「ウホホ……」
「変な名前考えるから泣いちゃったじゃないですか! ゴリラが可哀そうですよ!」
「俺はカッコいいと思うんだけどなぁ……」
「ウホホーホホーホホ」
「巨漢大王だと厳つくて怖いイメージがあるからヤダ。もっと優しくて強そうな名前がいい、か」
俺は考え込む。
ゴリラの希望に沿った名前……これならどうだ?
「ゴリマックス」
「ウホー!」
「気に入ったみたいですね」
次は次男、チンパンジーだ。
こいつは魔法が得意な種族らしい。
細身で中性的なイケメンチンパンジーであることに加えて、赤いバラのような花を咥えている。
キザなナルシスト感をウリにした名前にするか。
「スタイリッシュ横島」
「キチャー!」
「芸能人か何かで……?」
スタイリッシュ横島は名前を大変気に入ったようだ。
魔法で華やかな演出をしながら決めポーズを披露してくれた。
最後は長男、サルだ。
こいつは武士道みたいな志を持っているから、和風なのが似合うだろう。
俺はキリッとした顔で口を開いた。
「
「名前負け感がすごい」
「ウキキ」
サルが頭を下げながら拝命いたすと告げてきた。
俺の渾身の名前を気に入ったようだ。
「龍之介、横島、ゴリマックス! これからよろしくな!」
「よろしくお願いしますね」
「きゅー!」
「ウッキー!」
「キー!」
「ウホ!」
こうして俺はサルたちの群れのボスとなった!
彼らには菜園管理補佐をしてもらうぜ!
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