転生したら育て親が熊でした?

猫カイト

第1話転生してくまったなとかいう奴にはベアークロー

俺の名前は江戸川

え違うって?

まぁ、細かいことは気にするな。

わかりやすくいうと目が覚めたら俺の体が縮んでしまっていて、赤ん坊になってしまってたってこと。

そんなベイビーちゃんの俺がこの人生?

で初めてみた物は大きい白い熊だった。

いやー、人生10秒で終わりを確信したね。

だって熊だよ?

それも白い熊。

どこかの鬼じゃないと葬れないほどのビックスケールに見える熊。

俺が小さいからかもしれないけど。

俺は震えるしか出来なかった。

カッコ悪い?

人間なんてそんなもんよ。

そんな風に小熊のように震えていると、

「あら、かわいい!!この子育てるわ!」

と熊が突然喋りだし、俺のぷにぷにの皮を口で掴み、連れ去られた。

それが母熊?母親?との出会いだった。

そして俺は熊に育てられた。

嘘みたいな話。

童話やディ●ニーみたいな話。

でもそれが現実に起こっちまった話なんだから笑い話にもならねぇよ。


そんなわけで熊息子になった俺は平穏に育つわけもなく。


「人間だ!!軟骨がうまいんだよなぁ!!」


俺を狙う獰猛な猛獣達。


「人参食べる?」

「人間は生の人参なんて食べないよー」

「嘘だー なら何を食べるのさ?」

「そ、そりゃあ兎肉のパイとかさ。」

「う、嘘だよね?」


兎から人参貰ったり、兎の一家に怖がられたり。


「自由さ、自由が一番大事なんじゃ!」


梟から色んな事を教えて貰ったりした。


「いいかい坊や。獲物を狩るときには急所を狙うんだよ。」


母熊からは狩りの仕方を教わった。

その教えがどれも殺意マシマシで友達の動物に試せなかったのは言うまでもない。


 そんなハチャメチャな森の生活が何年か続き、ついに俺にも巣立ちの時が来た。


「どうしても行くのアラン?」

「あぁ、行くよ。俺は母さんから聞いた人間の冒険者みたいに立派な男になりたいんだ!」


もちろん嘘だ。


「そっか頑張ってね!僕も人間なら君と一緒について行きたかったんだけどなぁー」


親友の兎のバックが悔しそうに言うが、彼が人間を怖いという事を俺は知っている。

俺に心配させまいとついた優しい嘘なのだとおれはわかっていた。


「ありがとうバック。妹達と幸せにな!」

「そんな今生の別れでもないでしょ?」

「そりゃそうだ。」


俺達は共に笑いあう。

残酷な現実を隠すために。

この世界では分からないが兎の寿命は短い。

ほんとうに今生の別れになってしまうかもしれない。

だが、俺は人間。

元々この森に居てはいけない存在だ。

俺が居ることで環境にどんな影響をもたらすか分からない。

外来種のように。


「お母さんには挨拶しなくてもよかったの?」

「あぁ、あうと辛くなるから。」


母にはほんとうに感謝している。

俺を拾い、無償の愛で育ててくれた。

そんな母に別れを告げる勇気は俺には無かった。


「そっかそうだね。」

「それじゃあさよならだ。」

「うんさようなら。」


俺は荷物を持ち出ていこうとしたその時。


ひとつの咆哮が森を揺らした。

この咆哮は誰よりも知っている。

悲しみと愛の咆哮だと振り返らなくても理解できた。


「人間がなぜ泣くか分からなかったけど分かった。」

「I'll be back」


俺は親指をたて、森を後にする。

振り返ることは出来なかった。

振り返ってしまったら、もう別れられないから。


「旅人かい?乗っけていこうか?」


通りすがりの御者が俺に話しかけてきた。

そのみすぼらしい格好に同情したのか、それとも旅行者を狙う悪人か。

どっちにしろありがたかった。

足も疲れてきた所だった。

「ありがとう御者さん。どこに行くんだい?」

「隣町のロッキズさね。」

「そっか。じゃあ乗っけて貰うよ!」

俺は後ろの荷車へと飛び乗る。

ロッキズそれが俺の初めての街になるのか。

どんな街なのだろうか。

俺は今思えばこっちに来てから街なんて見たことは無かった。

心を踊らせながら干し草のベッドに寝転がり、上を向く。

下を向いたらまた仲間達を思い出してしまいそうだから。

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