第107話 乃百合さんを招待する

 俺は乃百合さんと恋人としての次の段階に進もうと思っていた。


 思っていたのだけど……。


 後もう一歩の勇気がでてこない。


 俺が悩み初めていた時、


「海定くん。わたしはあなたのことが大好きです。これからあなたにわたしのすべてを捧げていきます。よろしくお願いします」


 と乃百合さんが恥ずかしそうに言ってきた。


 この乃百合さんの気持ちに、俺は絶対に応えなければならない!


 乃百合さんの言葉によって、俺の心の中で抑えつけられてきた勇気が、一気に湧き出してくる。


「乃百合さん。俺もあなたのことが大好きです。俺もこれからあなたの為に、すべてを捧げていきます」


 と言った後、続けて、


「これから乃百合さんを俺の部屋にご招待します」


 と言った。


 今まででも最上級に近いと思われるほどの恥ずかしさ。


 でもなんとか言い切った。


 乃百合さんも、


「ご招待ありがとうございます。よろしくお願いします」


 と応えてくれた。


 恥ずかしさを一生懸命抑えているようだ。


 俺と同じくらい恥ずかしいのだと思う。


 でも俺の部屋に行くことを承知してくれた。


 うれしい。




 乃百合さんと俺は、俺の部屋のベッドの上で手をつなぎながら、向き合って座っている。


 いよいよ俺たちは、恋人として次の段階に進んでいく。


「乃百合さん、俺はあなたと前世で初めてお会いしてから、どんどんあなたのことが好きになっていきました。今世ではもっと好きになっています。好きでたまりません。美しくて素敵な女性であるあなたには、前世では、つり合うほどの男にはなっていなかったと思いますし、お力にもなることはできませんでした、今世でも、まだまだあなたにつり合うほどの男にはなっていないと思いますし、お力にもなれていないと思います。でもこれからもっと努力していき、きっと、乃百合さんを幸せにしていきます」


 俺は熱い気持ちを込めて乃百合さんに言う。


 乃百合さんは、


「そんなにもわたしのことを想ってくれてうれしいです」


 と言って涙ぐむ。


 そして、涙を少し拭いた後、続ける。


「海定くんは、わたしを重い病気から救ってくれました。本当に感謝しています。そして、いつもわたしに気をつかってくれますし、わたしの心を癒してくれます。心の底からやさしい、とても素敵な方ですので、わたしの方こそ、海定くんとつり合いが取れているのだろうか? 海定くんにはもっとふさわしい方がいるのではないか? あなたと付き合い始めてからも、そう思ってしまうことがありました」


「乃百合さん……」


「でもわたしは海定くんが好き。前世の時は、淡い初恋でした。恋する心を育てる前にこの世を去ることになってしまいました。しかし、今世で会ってからは違います。わたしもあなたがどんどん好きになっていきました。今は心の底から好きになっています。大好きです。海定くんもわたしのことを大好きだと言ってくださいました。うれしくてうれしくてたまりません。その想いに、しっかりと応える為、もっと努力をしていきたいと思います。そして、わたしの方も、きっと、海定くんを幸せにしていきます」


 恥ずかしそうに話す乃百合さん。


 でも乃百合さんの心の中の俺に対する熱意が伝わってくる。


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