第104話 外泊
「恥ずかしいので一度しかいいません。今日、海定くんとキスまですることができました。うれしかったのですが、せっかくキスまで進んだと言うのに、このままお別れするのはとても寂しいことです。わたしは海定くんが大好きです。その大好きな海定くんの家で、それ以上に進むことができたらいいなあ、と思っています。この想い。海定くんに届いてほしいと思っています」
顔を赤くして、うつむきながら話す乃百合さん。
「両親の許可は、既に出かける前にとってあります。その点は心配しないでください。海定くんのところで一泊していいと言っていましたし、明日の夜の九時までなら、そのまま海定くんと一緒にいていいと言っていました」
俺は驚いた。
ご両親が許可を出して下さっている……。
でもお父様は、本当に許して下さったのだろうか?
俺は、
「お父様は俺に、『自分の娘との結婚』そして『自分の会社の後継者』についての話をしていました。この二点のどちらにも『お受けいたします』と言わないと、外泊はさすがに無理ではないかと思いました。俺はまだお父様に返事はしていません。その段階でも許して下さったのでしょうか? 俺は乃百合さんと結婚したいという気持ちはどんどん大きくなってきています。後継者についても、やりがいはあると思っているので、お受けしたいという気持ちは持っています。でも今の俺には荷が重すぎるように思うので……」
と言った。
もしかしたら、この二点については、お父様から乃百合さんへは話が言っていないかもしれないと思った。
もしそうであれば、乃百合さんも対応に困るかもしれない。
しかし、これからのことを想うと、話はしておく必要があると思った。
乃百合さんの反応が気になったが、俺の予想とは違い、さらに顔が赤くなっていた。
「海定くん、あの、わたしと結婚したいという気持ちはどんどん大きくなってきているということですよね」
「そ、そうです」
俺は急激に恥ずかしくなってきた。
「うれしいです。わたしも同じ気持ちです」
乃百合さんはそう言った後、気持ちを整える。
そして、話を続ける。
「結婚と後継者のことはお父様から聞いています。お父様としては。海定くんとわたしが結婚してくれるのが一番の願いということです」
「婿養子になり、後継者になるのが結婚するのに際して、望ましいとおっしゃられているのでしょうか?」
お父様は、必要な条件とは俺には言っていなかった。
しかし、望ましいことではあるとは思っているだろう。
乃百合さんにはどう話をしているのだろうか?
乃百合さんは、
「お父様は、『これほどの優秀な人材であれば。わたしの婿養子・後継者にしたい。その気持ちは強い。でもわたしはお前の幸せを人一倍願っている。もし、海定くんがわたしの婿養子・後継者にならなかったとしても、きっとお前を幸せにしてくれる。お前は今まで、病気でとても苦しい思いをしてきた。その分、これからは、愛のある素敵な人生を送ってほしい。だからこそ今回の外泊は許可をする。ただ同棲はまだ認められない。婚約するまでは無理だからそこは理解してほしい。でも毎日海定くんの家に行くことについては、何も言わない。むしろそれ仲を深めていってほしい。それが一番大切なことだ。わたしとしては、海定くんが婿養子・後継者になってほしいという気持ちが、さっきも言った通り強い。それだけ海定くんにを期待しているんだ』とおっしゃっていました」
と言った。
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