第102話 レストランへ

 港を眺めことのできる公園。


 夕暮れ時は、特にカップルがたくさんいる場所。


 そこで俺たちは、ファーストキスを迎えた。


 二人が待ち望んでいた幸せ。


 乃百合さんも俺もその幸せを味わっていく。




 夜が訪れてきていた。


 お互いの唇を離した後、寄り添いながら海を眺める二人。


 予定では、もうそろそろここを離れなければならない。


 名残惜しかった。


 もう少しここにいて、ファーストキスの余韻を味わいたかった。


 俺もそうだが、乃百合さんも同じ気持ちのようだ。


 しかし、次の予定がある。


 俺たちは手をつなぎ、タワーへと向かうことにした。


 タワーにある高級レストランで食事をする。


 俺たちは、レストランの入り口に着くと、窓際の席に案内された。


 俺たちは席に着き、外を眺める。


 港、そして、その周囲のビルを中心とした夜景。


 ネットでも評判の高かったところではあった。


 それで、乃百合さんを招待しようと思い、予約をしてここに来た。


 しかし、実物は、予想をはるかにしのぐものだった。


 乃百合さんはうっとりしながら夜景を眺めている。


 その姿も素敵だ。


「海定くん、こんな素敵なところに招待してくれて、ありがとうございます」


 乃百合さんは感動して少し涙ぐんでいるようだ。


「俺もここまで素敵なところだとは思いませんでした。一緒にここに来ることができてうれしいです。そして、喜んでもらってうれしいです」


 俺も胸が熱くなってきた。


 料理は、このレストランのコース料理を頼んだ。


 良質の牛肉と新鮮な魚を使った料理。


 料理人の腕もいいとの話。


 この料理は、ネットでも高い評価を受けているだけあって、今まで食べたことのないほどのおいしさだった。


 乃百合さんも、


「これほどのおいしい料理は初めてです。ありがとうございます」


 と涙ぐみながら言っていた。


 料理を食べ終わった後は、紅茶を飲み、おしゃべりを楽しむ。


 夜景を眺めながらの優雅な時間だ。


 俺たちは。アニメの話で盛り上がる。


 趣味の面でここまで盛り上がれるのは、うれしいことだ。


 俺たちのフィーリングは合っていると思う。


 これからも楽しい時間を過ごして行きたい。


 やがて、


「高級レストランにまで連れてきてもらって、ありがとうございます」


 と言った後、乃百合さんは俺に頭を下げる。


「こちらこそ、こちらに招待できてよかったです。俺は乃百合さんと付き合い始めてから、この場所で一緒に食事をして、夜景を眺めることを夢見ていたんです。それが達成できて、これほどうれしいことはありません」


「わたしもここに来ることができて、うれしい気持ちでいっぱいです」


「喜んでもらって、ありがたいと思っています」


「今日特によかったのは、おしゃべりが楽しめたことです。いつもはこれほど長い時間、アニメの話はできませんでしたが、今日は結構長い時間、話すことができて楽しかったです。海定くんとわたしのフィーリングは合っていることを改めて認識することができました」


 乃百合さんはそう言うと微笑んだ。


 俺の方だけが思っていたということではない。


 乃百合さんの方も、同じことを思ってくれていた。


 自分と俺とのフィーリングが合っているということ。


 俺はうれしくてうれしくて、たまらなくなっていた。

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