第90話 デートへ進む二人

 俺は乃百合さんをデートに誘おうとしていた。


 乃百合さんはどう思うだろうか?


 デートに誘われるのを嫌がることはないと思う。


 しかし、恥ずかしがって、デートするのを躊躇する可能性はないとはいえない。


 その場合は、どう対応すべくだろうか?


 いや、乃百合さんは芯の強い女性だ。


 きっと、デートをしてくれると思う。


 俺は心を整えると、


「八月下旬のどこかで俺とデートをしていただけないでしょうか?」


 と言った。


「デートですか?」


 乃百合さんはとても驚いているようだ。


 しばらくの間、無言の状態が続く、


 これは失敗だったのでは……。


 急激にその思いが俺の心に湧き出してくる。


 とはいっても、デートに誘わなければ、仲を深めるチャンスを作ることすらできない。


 俺は返事を待った。


 やがて、


「海定くん誘ってくれてありがとうございます。わたし、今まで異性と付き合ったことがなく、デートというものに誘われたことがなかったので、どう対応していいのか、わからなくなってしまいました。うれしいです」


 と乃百合さんは恥ずかしそうに言ってきた。


 喜んでくれている!


 俺の心は沸き立っていく。


 そして、


「わたしでよろしければ、よろしくお願いします」


 と言ってくれた。


 デートをOKしてくれた!


 前世でも今世でも、これほどうれしく思ったことはなかった。


「ありがとうございます」


「こちらこそ。誘ってくださいまして、ありがとうございます」


 しばしの間、喜びを味わう俺。


 しかし、これはまだ始まったばかりの話。


 これからデートを成功させて、これ以上のうれしさをお互いに味わっていきたい。


 俺は、


「詳しい話はまたしますが、港にあるタワーとその周辺に行きたいと思います。映画館も近くにありますので、行って映画を一緒に観たいですし、公園もありますので、そこで一緒に夕陽を眺めたいと思っています」


 と言った。


 計画は立ててきてはいたが、OKがとれるかどうかがわからなかったので、細かいところはまだこれからというところもあった。


 もうOKをもらったので、詳細を決めていこうと思う。


 喫茶店やレストランにも行きたい。


 特にレストランは、なるべく高級なところに行き、乃百合さんとその雰囲気を味わいたい。


「海定くんとのデート、とても楽しみです」


 乃百合さんは想像以上に喜んでくれている。


 ありがたいことだ。


 乃百合さんの期待に沿えるよう、俺は今まで以上に、一生懸命努力していかなくてはならない。


 そして、俺は、


「乃百合さん、デートで一つお願いがあります」


 と言った。


「なんでしょう?」


「俺、乃百合さんの白いワンピース姿がとても素敵だと思いました。今度のデートの時、着ていただけるとうれしいです」


 このことをお願いするのは恥ずかしかった。


 しかし、俺はそれだけ乃百合さんの白いワンピース姿に夢中になっていた。


 それに対し、乃百合さんは、


「海定くんが気に入ってくれてうれしいです。いいですよ。デートの時、着ていきます」


 と恥ずかしがりながら応えてくれた。


 俺はうれしくて、心が沸き立っていく。


 それから少しおしゃべりを楽しんだ後、俺は、


「乃百合さん、好きです。大好きです。愛してます」


 と言った。


 乃百合さんも、


「わたしも海定くんのことが好きです。大好きです。愛してます」


 と言ってくれた。


 乃百合さんの声は、どんどん甘いものになってきている気がする。


 それだけ俺に心が傾いてきているのだと思う。


 これはうれしいことだ。


 でも俺はもっと乃百合さんとの仲を深めたい。


 今はまだ恋人どうしというものの、入り口に入ったばかりの状態。


 これをもっと発展させて、幸せな結婚へとつなげていきたい。


 その気持ちがだんだん膨らんでくるのだった。

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