第87話 お父様のお願い
俺は、
「後継者のことは、自分がそれにふさわしいかどうかはわかりません。高い評価をしていただけるのは、光栄の極みだと思っています。またお父様の後継者になって、会社全体を運営していくことは、やりがいのある仕事だと思います。しかし、もしかすると、お父様はわたしのことを買いかぶっているのかもしれません。申し訳ありませんが、少し検討する時間をいただけると助かります」
と言った。
後継者のことは悩むところだ。
乃百合さんとご両親、そして従業員の皆さんのことを背負っていかなければならない。
どうしても、俺には荷が重すぎるという思いがある。
しかし、これだけ期待されているし、やりがいもあるのだから、受けるべきだという気持ちも強くなってくる。
乃百合さんも、俺が後継者になった方が安心してくれると思う。
それでも今決断はできない……。
「先程も言ったと思うが、今日は、きみに決めてもらう為に言っているのではない。わたしの意志をきみに伝えることが、一番の目的だ。どういう選択をするかは、もちろんきみの意志だ。ただわたしとしては、きみに婿になってほしいし、会社を継いでほしいと強く思っている。それだけの人材だと思っている。きみはやりがいがある仕事だといってくれたが、きみであれば、この会社をさらに発展することができると思っている。とはいっても会社を継ぐことについては、心配になっているだろう。でもそれは心配することはない。もし継ぐ気になったのなら、その時から英才教育を行うから心配しないでいい。高い能力を持っているきみのことだ。英才教育によって、きみに会社を運営していく為の教育をしていけば、きっと会社をわたし以上に発展させることができるようになる。きみには、おおいに期待をしているんだ」
「わたしも乃百合さんと結婚したいという思いは強くなってきています。でも、それにはもっと乃百合さんにつり合うように努力していかなければならないと思っています。自分磨きを今まで以上にしていかなくてはいけないと思っています。そして、二人の愛をもっと育てていかなくてはいけないと思っています。それにはもう少し時間が必要だと思っています。また、後継者のことについては、おっしゃることは理解をしています。やりがいもあると思います。でも、少し検討する時間をください。申し訳ありませんが、お願いします」
お父様は少し残念そうな表情をしていたが、すぐに切り替える。
「うむ。了解した。わたしはきみが決断することを待つことにしよう、急いではいない。とはいっても、わたしの希望としては、高校二年生の間に決めてもらえるとありがたい」
「ご期待に沿えるように努力いたします」
「ありがとう。ただ乃百合との結婚は、婿養子になって後継者になるかどうかはどもかく、前向きに検討してほしい。わたしにはきみが娘にふさわしい男だと思っている。もっと自分に自信を持ちなさい」
「ありがとうございます。自分に自信が持てるように努力していきます」
「その気持ちが大切だ。では島森くん、また会おう。今度会う時はもっといい話が聞けることを願っているよ」
そう言った後、お父様は、
「娘の為に今までどうもありがとう。わたしは心からきみには感謝をしている。これからもよろしくお願いしたい」
と言った。
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