第72話 俺と先輩の対決
イケメン先輩は乃百合さんを恋人にしたいと言ってきた。
それに対し、乃百合さんは、
「先輩はイケメンだとわたしも思います。でもわたしは島森くんと付き合い始めました。島森くんはやさしくて思いやりのある素敵な人です。申し訳ありませんがわたしのことはあきらめてください」
と柔らかい口調ではあるが、厳しい言葉をイケメン先輩に言った。
夏浜さんも今までにない調子で言っている。
もしかすると、俺に対する想いも少し深くなってきたのかもしれない。
「あなたは正気でいっているのか? 俺の恋人になればこいつと付き合うより、よっぽどいい思いをさせてあげられるというのに……」
「先輩はは今まで、結構な人数の女性と付き合ってきたという話をわたしも聞いています。でも、飽きてその全員の人たちを捨ててきたという話も聞いています」
「でもあなたとすのなは特別だ。俺はあなたに惚れたし、すのなのことももう一度好きになった。今度は飽きることはないと思っている」
「わたしがいいたいのはそういうことではありません。もう少し先輩は女性のことを大切に扱うべきだと思います。そうしないと、いつまで経っても、本当の意味での恋はできないと思います」
芯の強い女性だ。
俺は乃百合さんのことが改めて好きになった。
「なぜだ! 今までの女性だったら、俺が声をかければすぐに心を動かしてきたというのに……。信じられない!」
イケメン先輩はしばらくの間、頭を抱えていたが、
「俺はイケメンで魅力のある男だ。さあ、二人とも俺の恋人になれ!」
と言って、乃百合さんとすのなさんのもとに近づいていく。
厳しい表情だ。
絶対に二人を恋人にしたいという意志がそこに現れている。
俺はその前に立ちはだかった。
前世や去年までの俺だったら、恐怖で体が震えていたかもしれない。
もしかしたら、イケメン先輩に屈していたかもしれない。
噂では力が強いと聞いていたからだ。
しかし、今は違う。
こういう状況になっても、心は動揺することはなく。平静なままだ。
そして今まで、俺が持っていなかった勇気も湧いてきた。
「そこをどくんだ!」
イケメン先輩は怒鳴ってくる。
しかし、俺は全く気にしない。
昼を過ぎてからは、だんだん蒸し暑くなってきている。
「先輩、二人とも先輩の恋人にならないと言っています。もういい加減、あきらめてください。それでもあきらめないのなら、俺が楯になります」
俺は柔らかい口調でイケメン先輩に言う。
「生意気なやつ!」
イケメン先輩は拳を震わせ、俺に近づいてくる。
俺に対して敵意をむき出しにしていた。
しかし、俺は負けるわけにはいかない。
すのなさんは今となっては好きではないが、嫌だというものをそのままにしておくわけにもいかない。
乃百合さんは俺が一番守らなければならない人。
俺は乃百合さんとすのなさんを先輩から守る!
俺の気力は最大限にまで強くなっていく。
そして、爽快な気分になってきた。
乃百合さんという好きな女性を守るということが、俺の心を高揚させていく。
イケメン先輩は、
「なぜお前は俺の前に立ちはだかるんだ! 口では二人とも、俺の恋人にならないと言っているかもしれないが、そんなものは一時的なものだ。俺はイケメンで魅力的な男だから、二人が俺の恋人になるのも時間の問題だ」
と言ってきた。
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