第71話 乃百合さんとすのなさん両方を狙う先輩
「冗談はよしてほしいな。こいつはお前が振った相手じゃないか。しかもこいつの目の前で俺たちはキスをしている。そんなやつとまた付き合いたいと言うとはな。ずいぶんと面白いことを言うじゃないか?」
「冗談なんか行っているつもりはありません!」
「いや、俺ほどのイケメンで魅力的な男はいないというのに、こいつを選択すること自体がギャグの一種じゃないかと俺は思うんだよ。そうは思わないのかな?」
「思いません!」
「全く素直じゃない人だ、だいたいこいつがお前のことを好きだとは限らないだろう。第一、隣に女性がいるし」
「隣の女性?」
すのなさんは驚いている。
今までは乃百合さんの存在を全く気にしていなかったようだ。
「そう言えばあなた、島森くんとどういう関係なの?」
今まで黙っていた乃百合さんは。口を開き、
「島森くんと同じクラスの夏浜です。島森くんと付き合い始めています」
と恥ずかしそうに言った。
「付き合っているですって?」
すのなさんは打撃を受けた様子。
しかし、すぐに、
「あなたも冗談がうまいわね。わたしほどの美少女が島森くんとまた付き合いたいと言っているんだから、島森くんはわたしと付き合うことしか選択肢はないの。『島森くんと付き合い始めています』といういう冗談は言ってほしくないわね」
とあざけるような笑いを浮かべながら言う。
この人は何を言っているのだろう。
あれだけ俺のことを厳しく振ったというのに、そのことを忘れたように、
「島森くんはわたしと付き合うことしか選択肢はないの」
と言う。
俺は悲しい気持ちになってきた。
乃百合さんと俺は付き合っている。
冗談で言っているわけではない。
そう言おうと思っていると、
「すのなよ、お前はもうこいつとよりを戻すのは無理だ。心が離れてしまっている。俺がお前をもう一度恋人にするんだから、それに従っていればいいんだ」
とイケメン先輩はすのなさんに言った。
すのなさんは悲しそうな表情をする。
そして、乃百合さんの方を向くと、
「あなたもすのなと優劣をつけがたいほどの美少女だ。惚れてしまったよ。どうだ、俺の恋人にならないか? 俺はイケメンだし、俺の家は金持ちだ。俺の恋人になれば、贅沢はできるし、プレゼントもたくさんしてあげられる。いい話だろう?」
とニヤニヤしながら言ってくる。
「それは、二股というのでは? わたしはもうイケメン先輩とは付き合いたくありません」
とすのなさんは言ったが、
「この人もお前も愛し、恋人にするのだ。それでいいだろう」
とイケメン先輩は言う。
ついに、乃百合さんにまで手を出してきた!
乃百合さんを断固として守らなければならない。
「先輩、言っていいことといけないことがあります。夏浜さんは俺と付き合っています。先輩は手を出さないでください。手を出すようであれば、俺はその手から夏浜さんを守ります!」
俺は厳しい口調でイケメン先輩に言った。
前世でも今までの人生でも、こういう態度をとるのは始めてだ。
俺はそれだけ乃百合さんのことが好きなのだ。
「島森くん……」
驚いた表情の乃百合さん。
イケメン先輩も驚いたが、
「何を言うんだお前は。今まで俺のようなイケメンと出会っていなかったから、この人はお前に心を傾けたのだ。俺と出会った今ならば、俺と恋人どうしになりたいに決まっている。そうだろう?」
と乃百合さんに聞いてくる。
俺は一瞬だけ、もしかしたら、イケメン先輩に心が動いてしまうのでは、と思った。
すのなさんもそうだったから。
すのなさんは俺を捨てて。あっけなくイケメン先輩の恋人になった。
乃百合さんもそうならないとは限らない。
しかし、俺は乃百合さんを信じたいと思った。
乃百合さんがイケメン先輩に心を動かすことはない!
俺はそう強く思っていた。
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